ペトロヴィッチ時代の戦術の“偏り”を解消した堀レッズの妥当性

2017年10月18日 サッカーダイジェストWeb編集部

堀監督の改革がもたらすコンパクトかつ組織的な守備。

堀監督は、前任のペトロヴィッチ監督が愛用した3-4-2-1から4-1-4-1に変更。コンパクト性を保つことで、攻撃から守備への切り替えをスムーズにした。山崎 賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 成績不振を理由に監督が解任されれば、チームに変化が起きるのは当然だ。不振に陥った原因を分析し、反省からスタートするため、少なくともひとつ、ふたつの要素は見直しの対象となる。場合によってはツギハギだらけの戦術修正を施すより、一から作り直したほうが早いのかもしれない。
 
 浦和レッズにも、そんなことが言えそうだ。前任のミハイロ・ペトロヴィッチ監督(7月30日に解任)のサッカーは、中盤を空洞化し、前線を5トップ(3枚のFW+2枚のドリブラー)とする戦術に特徴があった。ピッチの横幅を活かし、意図的に〝偏り〞を作ることで、相手の守備を混乱させる。そして、噛み合わせがズレたところを起点にポゼッションサッカーを展開する。3-4-2-1システムは、この攻撃の幅を生み出すための手段であった。
 
 しかし、そうした〝偏り〞には弱点もある。ピッチ上には11人しかいない。攻撃の局面で数的優位を作ったということは、ピッチ上のどこかに数的不利な状況が生まれているわ けだ。仮にミスからボールを失えば、コインの表裏をひっくり返されるように、一気にピンチに陥ってしまう。
 
 特にペトロヴィッチのやり方では、振り幅の大きい5トップから5バックへのネガティブトランジション(攻→守)を強いられ、さらにビルドアップ時にはボランチを最終ラインまで下げてシステムを変形させるなど、攻守の切り替えに時間を要した。そのため、数的な〝偏り″を逆に利用された時のダメージは大きい。空洞化した中盤はフィルターが利かず、相手アタッカーに対して数的優位で守れないからだ。
 
 堀孝史新体制となって改善されたのは、まさにこの点だった。基本システムを4-1-4-1に変更。DF、中盤、前線の3ラインが、ギュッとコンパクトに圧縮されている。
 
 中盤の枚数も変わった。ペトロヴィッチ時代は、阿部勇樹と柏木陽介の2枚、あるいは攻撃時は柏木1枚か、試合によっては0枚になることもあった。堀体制では逆三角形の3枚。ボールを失ってもすぐに奪い返せる距離感を全体が保っており、不測の事態にも混乱しなくなった。コンパクト性と、それによって得られる利益は、ペトロヴィッチと堀、両体制のもっとも大きな違いだろう。
 
 引いてブロックを築いて守る時も、堀レッズではコンパクト性が保たれているから、高い位置で相手のパスを引っ掛けてカウンターに行ける。一度自陣に引くと、5バックでお尻が下がるペトロヴィッチ時代には出しづらい特長だった。
 
 半面、失った特長もある。5トップからFWとドリブラーを1枚ずつ削り、それをインサイドハーフに回したことで、敵ディフェンスラインに与えるプレッシャーは弱まった。ペ トロヴィッチ時代は中央からKLM(興梠慎三、李忠成、武藤雄樹)が仕掛け、相手DFが内に絞ったところで、空いたサイドから関根貴大(現インゴルシュタット)や駒井善成が飛び出して行ったが、堀体制では彼らのようなドリブラーがサイドから仕掛けるシーンが減っている。
 

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