トップ4浮上へ、攻撃の活性剤として――マタ|マンチェスター・U

2014年02月19日 山中忍

連携がこなれるにしたがい、中央の崩しも

移籍後4試合で3アシストと好スタートを切ったマタ。チャンピオンズ・リーグ出場権確保(4位以内)に向け、文字通り鍵を握る。 (C)Getty Images

 1月後半に世間を驚かせた、ファン・マヌエル・マタのマンチェスター・ユナイテッド入り。だが、当事者にすれば理路整然とした移籍だった。

 獲得を決めたデイビッド・モイーズ監督は、就任当初から実績あるチャンスメーカーを欲していた。約64億円というクラブ史上最高額の移籍金と、古巣での待遇の2倍とも言われる高年俸が、ユナイテッドの本気度を物語る。チェルシーにすれば、依然トップクラスのプレーメーカーでありながら、2列目の余剰人員に成り下がっていた選手を、獲得費用の約1.6倍で売却できたのだから、“おいしい”商談だ。

 マタ自身は、「断るにはもったいない話だった」と言っている。スペイン代表での立ち位置が微妙なMFは、クラブでのベンチ生活に別れを告げ、今夏のブラジル行きに近づくラストチャンスを掴んだ。

 今シーズンのユナイテッドの低迷は、攻撃よりも守備に問題があるからだが、マタのような一流のタレントは買っておいて損はない。ましてや、国内のライバルから前シーズンのリーグアシスト王を手に入れる機会など滅多にない。ロビン・ファン・ペルシとウェイン・ルーニーという空陸両用のワールドクラスと前線で共演すれば、ロングパスもあるマタの演出能力は、チェルシー時代よりもっと活きる可能性さえある。さらに、2列目の選手に得点も望むモイーズ監督の要求にも応えうる。マタは過去2シーズンのリーグ戦で通算18ゴールを上げているのだ。

 実際、入団から3日後に訪れたデビュー戦、23節カーディフ戦(2-0)でのパフォーマンスは上々だった。ボールタッチはチーム最多の62回。ダイアゴナルパスで先制点のきっかけを作れば、的確にサイドに叩いて追加点を呼んだ。チームは続く3試合で7ポイントを落としたが、マタ個人は4試合で3アシストの好発進だ。

 チームのクロス総数が80本を越えた25節のフルアム戦(2-2)では、単調な攻撃パターンが指摘された。だが、目敏くスペースに動くマタと周囲の連係がこなれるにしたがい、中央からの崩しも増えるだろう。続くアーセナル戦(0-0)、ユナイテッドが警戒心を解かなかった敵から奪った3つのチャンスのうちの2つは、インサイドでマタとファン・ペルシが絡んで生み出したものだ。

 マタの獲得を、「これから続くビッグネーム獲得の第一弾」と語ったモイーズには、チームの士気を高める狙いもあったはずだ。指揮官もっとも頼りにしているルーニーは、マタの加入を境に、拒み続けていた契約延長交渉を開始した。守備面を含むチーム立て直しの万能薬にはなりえないとはいえ、トップ4浮上に不可欠な攻撃面の活性剤として、マタの効能はたしかに現われはじめている。
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