【札幌】6年半ぶりに復帰した残留請負人。その“残留力”の極意とは何か?

2017年08月27日 斉藤宏則

6シーズン続けて残留争いの渦中に身を置き、勝ち残り続けてきた石川直樹。

この夏仙台から札幌に移籍した石川。毎年残留を勝ち取ってきた男が知る「残留のためのポイント」とは? 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

「まずはホッとしています」
 
 今夏、札幌に加入したDF石川直樹が、移籍後初めて出場したホームゲームは、先月まで在籍した古巣との対戦だった。「寝食をともにした仲間とこうして戦えるというのは幸せなこと」と喜びの声も発したが、まずは冒頭の言葉通り、やはり安堵の気持ちが大きかった様子だ。6年半ぶりに復帰した札幌での地元初戦に勝利し、「自信にもなった」と振り返る。
 
 そんな石川だが、2009年途中からおよそ1年半、柏からの期限付き移籍の形で札幌でプレーした後、2011年から新潟で2年、2013年から仙台で4年半をプレー。そして各シーズンの順位を見ていくと14位、15位(新潟)、13位、14位、14位、12位(仙台)と常にJ1残留争いの渦中に身を置き、そして勝ち残り続けてきた猛者である。
 
 監督交代が敢行されたシーズンもあったが、必ずそこから踏ん張りを見せてきた。この残留請負人ともいえるタフなDFの復帰は、J1残留を大きな目標として戦う札幌にとって守備力のアップのみならず、サバイバル力のアップにもつながるはず。そんな石川にJ1で生き残っていくためのポイントを聞いてみた。
 
「やはりまずは、過去を振り返らないことですね。『あの試合での負けが痛かった……』とか『あそこでしっかり決めていれば……』とか、そんなことを言っていても何も意味がないわけです。そうやって後悔している時間があるんだったら、少しでも次の試合に意識を向けたほうがいい。もちろん、反省することは大事です。でも、終わった試合の結果は変えられないんだから、修正すべき点を確認したら、あとは前を向いていくだけ」
 
 そして実体験を加えながら、こうも話している。
「残留争いの真っただ中にいると焦りもあるから、『いいプレーをし続けなければ…』という気持ちが強くなりがち。気持ちは分かるんだけれど、自分たちにできないことまでやろうとしてしまうことがある。でも、できないことはどんなに頑張ってもできない。だからまずは、自分たちがやれることを100%出しきることが大事。というよりも、それ以外にやれることはないですよね? 2012年の新潟でも、ラスト4試合の時に本当に追い込まれて、選手ミーティングを開いたんです。そして、そこでそういう話をして残り試合に挑んだ結果、4試合で3勝をした」
 
 トップリーグに挑むのが今シーズンで5度目となる札幌。そのなかで残留を果たしたのは2001年の1度だけ。それ以外はどれも1年で降格をする、いわゆるエレベータークラブとなっている。しかし、この夏に石川が帰ってきた。復帰ではあるが、J1の札幌でプレーをするのは石川にとって初めてのこと。
「まさか、また札幌のユニホームを着られるとは思っていなかった。この年齢の選手が、シーズン途中に完全移籍のオファーをもらえるなんて光栄なこと。その期待に応えなければいけない」
 
 9月で32歳を迎える背番号32の"残留力"が、札幌を力強く支えていく。
 
取材・文:斉藤宏則(フリーランス)
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