世界一に挑むリトルなでしこ。日本女子サッカーはなぜ強い?

2014年04月04日 西森彰

2007年からの効果的な育成施策で大輪の花を咲かす。

明確な育成方針と的確な指導は若年層のレベルアップの主要因だが、金銭面に至るバックアップ体制などにより、将来に向けて選手が安心してサッカーに打ち込めることも大きいだろう。 (C) Getty Images

 日本の女子代表は、これまで3回、世界一を賭けて戦った。

 最初は2010年のU-17女子ワールドカップ。吉田弘監督に率いられたチームは、PK戦の末、韓国に敗れた。二度目は11年の女子ワールドカップ。ご存じのように佐々木則夫監督指揮するなでしこジャパンは、PK戦の末、アメリカを破り、優勝した。このチームは、翌年のロンドン五輪も決勝まで勝ち上がったが、アメリカに借りを返されている。

 そして、日本時間4月5日(土)の朝、U-17日本女子代表、通称「リトルなでしこ」が、スペインを相手に、日本女子サッカー史上4回目の世界大会ファイナルに挑む。

 アテネ五輪予選で北朝鮮を破る「国立の奇跡」を監督として演出した上田栄治女子委員長は、女子サッカー界に返り咲くと、07年6月、女子サッカーの成長施策「なでしこvision」を発表した。
「サッカーを日本女性のメジャースポーツにする」
「なでしこジャパンを世界のトップクラスにする」
「世界基準の『個』を育成する」
 掲げたのは、以上の三本柱だ。

「世界基準の『個』の育成」は、低年齢層からしっかりとした技術を身につけることに重きが置かれる。日本人の特徴であるアジリティー(敏捷性)を活かしながら、早い判断でしっかりとパスをつなぐ。こうしたベースは、小中学生年代で習得する。

 そのきっかけとして、U-12トレセンへの女子選手の参加や、U-15女子ナショナルトレセン、JFAエリートプログラムといった機会が設けられている。全国から集まった選手同士が同年代から刺激を受け、自分の課題を認識するとともに、ナショナルチームのスタッフが金の卵を発掘する場にもなっている。

 U-15女子ナショナルトレセンで注目された猶本光(浦和レッドダイヤモンズレディース)は、10年のU-17女子W杯で銀メダル、12年のU-20女子W杯で銅メダルを獲得。田中陽子(INAC神戸レオネッサ)らと織りなした、阿吽の呼吸の魅力的なパスワークは、「小さい頃から同じメンバーで何度も海外遠征などを行なってきた」影響もあると語っている。

 育成年代の強化と併せて、「なでしこジャパンを世界のトップクラスにする」ための制度が整備され、すでにフル代表にいる選手も力を発揮しやすくなった。まず、なでしこリーグのスケジュールやクラブの運営力が強化され、環境も改善された。また、代表主力の海外挑戦には「海外強化指定選手」の制度がバックアップ。移籍に伴う費用として一時金や生活費が支給されている。

 さらに「PLAYERS FIRST」の精神を持つたくさんの指導者が、選手の成長を最優先に考えてきた。自チームの公式戦と重なっていても、代表スケジュールを優先して選手を送り出す指導者も少なくない。こうした日本サッカー協会と各チームの二人三脚が、着実に成果をあげていく。

次ページ多くの選手に国際経験をと、予選メンバーから3分の1を入れ替える。

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