【番記者通信】名門復活に残された唯一の筋道|ミラン

2014年04月01日 レナート・マイザーニ

有望な若手をリーズナブルな値段で引き抜くのは輪をかけて難しい。

補強は現有戦力の売却が前提となるはずだが、まとまった金額になりそうなのはこのバロテッリやアバーテくらいのもの。再建の道は平坦ではない。 (C) Getty Images

 クラブ再建のプロセスは、どうから、どう手をつけるべきか。具体的なプランはまだ不明だが、クラレンス・セードルフによる“暫定政権”を経て、ミランが競争力を取り戻し、名門復活を遂げるには、一から作り直す必要があることだけは確かだ。

 移籍市場で誰を狙うのか。来シーズンに向けた動きが、すでに盛んに報じられている。だが現実を直視すれば、そもそも投資が可能なのか、それさえ疑わしい。セリエAで10位に沈むミランは、来シーズンのチャンピオンズ・リーグの出場権の獲得が絶望的で、出場ボーナスや入場料収入がなくなるのは財政的に大きな痛手だ。補強資金は現有戦力を売却して確保するしかないだろう。もっとも、そうしたところで十分な売却益を得られる保証はない。

 実際、それなりの移籍金を得られそうな選手は限られている。ステファン・エル・シャーラウィは数少ないそのひとりだが、首脳陣は売却に否定的だ。一方、オファーがあって放出の用意もあるマッティア・デ・シリオは、高が知れている。まとまった金額になりそうなのは、イグナツィオ・アバーテとマリオ・バロテッリのくらいのものだろう。2人で3000万ユーロ(約42億円)ほどの収入が見込まれる。ただし、そのすべてを今夏の市場に投じられない。アディル・ラミやアデル・ターラブトの買い取りに1200万ユーロ(約16億8000万円)がかかるためだ。差し引き1800万ユーロ(約25億2000万円)程度では、十分な強化は実現できない。

 ビッグネームの獲得は今夏も不可能で、必然的に若返りを進めざるをえなくなる。マイケル・エッシェンやフィリップ・メクセスなど高年俸のベテランは間違いなく放出。ファンの評判がよろしくないケビン・コンスタン、ヴァルテル・ビルサ、マルコ・ボネーラ、クリスティアン・ザッカルドなども、セードルフ監督とともにリストラの対象となるだろう。陣容も、年俸総額もごそっと削られ、ミランに残された道は将来を見据えた投資だ。

 オーナーのシルビオ・ベルルスコーニや副会長のアドリアーノ・ガッリアーニも、これが生き残るほぼ唯一の道だと、そう理解しているようだ。そして、カカ、リッカルド・モントリーボ、ラミ、ナイジェル・デヨンクを中心に、そこに肉づけを図るというチーム作りは、ファンの大部分からコンセンサスを得てもいる。

 ただ、その目論みどおりに強化を実行するのは容易ではない。貧弱になったイタリアの移籍市場では、選手を売りに出しても希望額で売却できるとは限らず、他のクラブから将来性のある若手をリーズナブルな値段で引き抜くのは、それに輪をかけて難しい。再建の道のりは決して平坦ではない。救いがあるとすれば、生き残る道はもはやそれしかないと、そう気づいたことか。

【記者】
Renato MAISANI
レナート・マイザーニ
1985年カターニャ生まれ。2006年から地元紙やWEB媒体でキャリアを積み、ミラノに軸足を移して活動の場を拡げる。現在はイタリア国内の著名ポータルサイトの編集員。国外サッカーにも通じ、地元紙でフランス・リーグのレビューを連載中だ。

【翻訳】
神尾光臣
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