「これは敵わん」と稲本潤一を脱帽させた、ふたりのスーパーレジェンド

2017年08月17日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

「欧州の代理人が観に来てくれてたけど……総スカンでした」。

8月中の公式戦出場に向け、調整に余念がない稲本。自身のキャリアを振り返る連載インタビューは、明日からスタートする。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 ゴールデンエイジの面々をひとり訪ね歩く連載シリーズ『黄金は色褪せない』。4回目のゲストは、北海道コンサドーレ札幌に所属する名ボランチ、稲本潤一だ。

 明日スタートする本編を前に、ここではとっておきのエピソードを先出しでお届けしよう。

【稲本潤一PHOTO】語り継がれるべきキャリアを厳選フォトで

 稲本の代名詞のひとつが、豪快な"ボール狩り"。長い脚と強靭なフィジカル、そして天性のボディーバランスを活かし、ここぞと決めた獲物は絶対に逃さない。ボールを奪った勢いで一気に持ち上がり、敵ゴールを陥落するのが、いわば十八番だ。
 
 そんな元日本代表MFがまるでボールを奪えず、「これは敵わん」と脱帽したスーパーレジェンドがふたりいる。
 
 一人目は、バルセロナの伝説的英雄シャビだ。1999年のナイジェリア・ワールドユース。大会前の怪我もあってコンディション調整に苦しんでいた稲本だが、決勝の頃にはかなり調子が上がっていた。迎えたU-20スペイン代表との大一番。後半から登場したイナは相手の司令塔を封じ込むべく、颯爽とピッチに登場した。
 
「彼がバルセロナでやってるという情報はあったから、ここはなんとしても止めてやろうと思ってた。万全ではないにせよ、準決勝の時よりは断然コンディションが良くなってたし、なんとかゲームの流れを変えたかった。自分のコンディションが良くて、かつ自分のタイミングでボールを獲りにいけば、ほとんど失敗することはなかった。でも、シャビにはまるで通じませんでしたね。くるくる回られたのを覚えてる。身体をガッと当てにいってもその力をうまく利用されて、回られてって感じ。なにをどうしても獲れなかった。思いっきりがっついたんやけど……。厳しかった」
 
 もうひとりは、フランス代表の将軍ジネディーヌ・ジダンである。2001年3月、場所はレ・ブルーの本拠地スタッド・ドゥ・フランス。トルシエジャパンが0-5という歴史的惨敗を喫したあのゲームである。
 
「もうね、忘れもしませんよ。2001年のサンドニ。そう、0-5のね。あん時のジダンだけはホンマに強烈やった。ピッチは雨でびちゃびちゃなんやけど、フランス人にはまるで関係なかったみたい。なにをやっても軽くあしらわれて、間合いにさえ飛び込ませてもらえんかった。好き放題やられて、チームはずるずる失点を重ねて。ちょうど僕は海外のチームを探してる時でね。欧州の代理人がプレーを観に来てくれてたんですけど、あの内容やからねぇ……。総スカンでした」
 
 いわゆる"サンドニ・ショック"。あれから16年の年月が流れたが、稲本にとってはいまだアンフォーゲッタブルな出来事のようだ。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)
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