【識者コラム】東京五輪後、新国立は「球技の聖地」となれるのか?

2017年08月18日 二宮寿朗

“陸上の聖地”として使えないのなら“球技の聖地”に。

過去の五輪メインスタジアムの現在は球技やコンサート会場として活躍しているようだ。(C)Getty Images

 2020年の東京五輪に向けて、現在建設中の新国立競技場だが、五輪後の「後利用」を巡りスポーツ庁の作業部会が7月26日に行なわれ、大会終了後には陸上トラックを撤去し、「球技専用スタジアム」に改修される方向で調整が進んでいる。五輪メインスタジアムの後利用について、これは妥当な判断なのか。スポーツライターの二宮寿朗氏に見解をいただいた。


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 新国立競技場の球技専用化には、基本的に賛成だ。そもそもスペースの問題で常設のサブトラックを置くことができず(2020年の東京五輪は仮設で対応)、規定で世界陸上など陸上競技の国際大会を開催できないという。〝陸上の聖地〞として使えないのであれば、トラックを撤去して〝球技の聖地〞とするのは妥当な判断だ。
 
 ちなみに陸上競技については、味の素スタジアムや駒沢競技場、そして7万2000人収容の日産スタジアムを整備して対応するという案が出ているとも聞く。
 
 東京五輪のメインスタジアムを、大会後いかに有効活用するかは、突きつけられた大きな課題だった。五輪・パラリンピック終了後、施設の運営権は民間に移譲される。その後はトラックを撤去し、6万8000席から8万席にスタンドを増設するなど改修作業に入るという。稼働率や収益性を踏まえたうえでサッカー、ラグビーなどの球技、コンサートなどのイベントを主対象として、採算ベースに乗せていく考えだろう。
 
 では、過去の五輪開催都市において、メインスタジアムの「アフター」はいったいどうなっているのか。
 
 1996年アトランタ五輪で使用された8万5000人収容のセンテニアル・オリンピック・スタジアムは大会後、大幅に改装されてアトランタ・ブレーブスの本拠、5万人収容のターナー・フィールドとなった。
 
 元々使っていたスタジアムの老朽化に伴う判断で、有効活用の好例である。ちなみに旧スタジアムはターナー・フィールドの駐車場となった。なお、2017年にブレーブスがアトランタ郊外に本拠を移したため、現在はジョージア州立大のフットボール競技場として使用されている。
 
 2000年シドニー五輪のメイン会場となった11万人収容のスタジアム・オーストラリアは、3年後のラグビーワールドカップで使用できるよう、大会後にトラックの撤去や可動式スタンドの取り付けなど改修が施された。現在は8万3000人収容で、ラグビー、サッカー、クリケットなどの球技、さらにはコンサート会場として活躍している。

次ページアクセスともに問題はない。あとは「見やすさ」という点をクリアできるか。

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