頭脳派ドリブラー中野嘉大が見せた“あえて仕掛け過ぎない”ドリブルの妙

2017年08月15日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「アンデルソン・ロペスを意識していた」

ドリブラーの中野が「あえて仕掛け過ぎない」意味を説明した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ22節]仙台1-0広島/8月13日/ユアスタ
 
 今季、川崎から期限付き移籍で仙台に加入した中野嘉大が、尻上がりに調子を上げている。
 
 序盤こそ怪我で出遅れたが、15節の鳥栖戦に1点ビハインドの場面で途中出場すると、同点弾を挙げて勝点1獲得に貢献。16節のC大阪戦からは、ウイングバックで先発フル出場を続けており、19節の柏戦でも劇的な同点ゴールを決めるなど、その活躍は目覚ましい。
 
 広島との一戦でも鋭いドリブルで左サイドの攻撃を活性化させ、対峙した元日本代表DF丹羽大輝を翻弄。とくに後半は、そのドリブルで何度も観衆を沸かせたが、試合後に中野は意外なことを言っていた。
 
「あえて仕掛け過ぎないことは意識していました」
 
 一瞬、頭に「?」が浮かんだものの、すぐに疑問は解決した。その言葉の真意は、9得点で広島のトップスコアラーであるアンデルソン・ロペスを抑えるためのものだと説明してくれたからだ。
 
「今日は自分のサイドにいたA・ロペスを意識していて、彼は攻め残りをしていた。だから、高い位置を取り過ぎて丹羽選手との1対1になるのではなく、どちらかというとA・ロペスに守備意識を持たせるドリブルの持ち方を心がけていた。自分のボールサイドに(A・ロペスが)来た場面だったら、早めにサイドバック(丹羽)に仕掛け過ぎずに、あえてA・ロペスにも守備をさせて下げることを後半は意識しました」
 
 確かに決勝点の前の場面で中野は、丹羽よりもA・ロペス側にポジションを取り、A・ロペスを引きつけてから丹羽に1対1を仕掛けていた。一度は丹羽にボールを奪われたが、守備に追われたA・ロペスは丹羽からパスを受けても攻撃に転じることができずにボールロスト。その流れから西村拓真がミドルを放ち、こぼれ球を奥埜博亮が押し込んで決勝点を挙げた。
 
 守勢に回されたA・ロペスは、その後も意味もなくボールをタッチラインに豪快に蹴り飛ばすなど、フラストレーションを溜めていたように見えた。左サイドの頭脳派ドリブラーは、心理面でも相手を手玉に取っていたと言えるだろう。
 
 もっとも、本人が「結果を残したかった」と述べるように、クロスやシュートをゴールに結びつけることはできていない。それでも筑波大と川崎で風間八宏監督(現・名古屋監督)に培われた才能が、仙台の地で輝きを増しているのは明白で、さらなる成長に期待が持てるだろう。
 
取材・文:志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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