【蹴球日本を考える】血気盛んなポドルスキの存在感とブラジル人の痛快な股抜き

2017年08月07日 熊崎敬

世界チャンピオンならではの強気のアプローチ。

一触即発の雰囲気となったポドルスキとディエゴ・オリヴェイラ。前者は世界王者らしい存在感を見せ、後者は巧みな駆け引きを見せつけた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 いつもはアウェーゴール裏に空席が目立つ日立台・柏サッカー場での神戸戦だが、この夜は満員となった。言うまでもなく、ポドルスキ効果である。

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 デビュー戦に続くゴールはならなかったが、存在感はかなりのものだ。
 なによりまず、味方からボールを奪ってでもシュートを撃とうとする。立ち上がりにはエリア内で自ら持ち込んで撃とうとしたところに大森が重なり、シュートを撃たれてしまった。この大森の一撃は敵に阻まれ、直後、ポドルスキは大森を怒鳴りつけた。
 
 仲間への要求、叱責だけではない。レフェリーにも遠慮なく主張する。開始直後に背後から中谷に押されてボールを失うと、倒れ込みながらレフェリーに激高した。
 
 元々、血の気の荒いところがあるポドルスキだが、こうした激しいアピールには「居場所作り」という意味合いもあると思う。
 味方には「肝心なところでは俺によこせ、よこせば決めてやる」、レフェリーには「俺が倒れたら、ちゃんと吹け」。
 立ち上がりに大々的にアピールすることで、ゲームを自分のペースに巻き込もうとしているのだ。これは世界チャンピオンならではの強気のアプローチだ。
 
 もちろん、怒鳴っているばかりではない。ちょっといいなと思ったのは、味方がファウルに巻き込まれた時、真っ先に「現場」に駆けつけていたことだ。倒されたチームメイトの様子を見て、レフェリーや敵とやりとりをする。気難しい、孤高のエースを気取っているだけではない。
 こうした居場所の作り方は、イングランドやイタリア、トルコでの「傭兵」経験から自然と身につけたのだろう。
 
 ポドルスキのことばかり書いてきたが、この夜の主役は彼ではない。柏のふたりのブラジル人だ。1ゴール・1アシストを決めたクリスティアーノと、1ゴールのディエゴ・オリヴェイラである。
 
 改めて書くことでもないが、やはりブラジル人はサッカーが本当に上手い。敵を大きな尻でしっかりと抑え込んだポストプレー、そこからの細かいワンツーでの仕掛けは、日本人ではなかなかできないものだ。
 
 一番のハイライトはクリスティアーノの豪快な一撃で決まりだが、ディエゴが決めた股抜きも痛快だった。
 64分、右タッチライン付近でふたりに囲まれながらも縦パスを受け、難しい体勢から橋本の股を通す。1対2と一見不利な局面だが、ひとりを標的にすれば1対1だ。このあたりは技術だけでなく、駆け引きも巧妙だ。
 よい子のみなさんは、夏休みの課題にしてほしい。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)
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