楢崎正剛も舌を巻いた"後輩GK"の奮起。戦術面でも後手に回った名古屋の戦い方に問題はなかったか?

2017年07月10日 サッカーダイジェストWeb編集部

「徹にはやられましたね」と名GKも認める活躍。

楢崎も好セーブを見せたが、徳島の長谷川はそれ以上の活躍だった。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 個を束ねてチームにするか、チームを鍛えて個を際立たせるか。対照的なアプローチを見せるチームの今季2度目の対戦は、その内容と結果も実に対照的なものとなった。
 
 高度な技術と判断力を伴った個人戦術の集合体として着実に進歩を続けてきたのが、風間八宏監督率いる名古屋というチームだったが、この日は肝心要の"個"がうまく組織につながっていかなかった。
 
 前線に負傷明けの八反田康平と永井龍、そしてプロ初スタメンの高卒ルーキー深堀隼平というフレッシュな顔ぶれを並べるも、深堀は33分で杉森考起に交代し、永井は39分のPKを失敗。八反田はフル出場したが、コンディション的にはまだまだこれからというところ。
 
 開始6分でセットプレーから失点したことで、常に追う展開にしてしまったことも彼らにとっては不運だった。後半から追い上げの旗印として投入されたシモビッチも佐藤寿人も、2点を追う戦いの中ではゴール前に集中せざるを得ず、いつものパスワークで押し込むスタイルはほぼ見られなかった。
 
 それでも個の力でチャンスを生み出せるのは名古屋の強みで、試合全体を通したシュート数はほぼ同数。決定機の数はむしろ多いぐらいだったが、ポストに二度も嫌われる不運にも見舞われた。
 だが一番の不運は、古巣対戦に燃えた徳島の守護神の存在だったのではないか。
 
 名古屋ユース出身で吉田麻也の同期でもあるGK長谷川徹が見せたビッグセーブの数々は、間違いなく徳島の勝因であり、名古屋の敗因のひとつだった。
 
 実に彼がこの日防いだ名古屋の決定的なシュートは少なくとも8本。その半分も決められていれば、名古屋は勝っていた計算だ。
 
「自分のパフォーマンスなんて全然です。勝てて良かったです」と謙遜する28歳は、的確なポジショニングと鋭い反応で前半のPKストップをはじめ八面六臂の大活躍。
 
 そのハイパフォーマンスぶりには楢崎正剛も「徹にはやられましたね。そんなタイプにはあまり感じたことはなかったけど(苦笑)、今日はちゃんとというか、やられました。ただそれは頑張っている証拠だと思うし、昔一緒にやっていたこともすべて見ていますし、別に驚きではないです」と褒め称えるばかり。しかし長谷川はまずはチームワークの勝利を強調する。

次ページ名古屋は戦い方に課題を突き付けられた。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事