18歳新星の移籍金はどこまで上がる?「ポグバ超え」はもはやファンタジーじゃない!

2017年06月25日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

競合するクラブが多ければ多いほど価格が吊り上がる。

16-17シーズンに大ブレイクしたエムバペ。今夏はメガクラブによる熾烈な争奪戦に発展している。写真:Alberto LINGRIA。

 モナコに所属する18歳のFWキリアン・エムバペは、今夏の移籍市場で最も動向が注目される新星だ。その絶対的なクオリティーは、向こう数年の間に世界のトップを争うストライカーに成長しうるレベルにある。
 
 マンチェスター・U、レアル・マドリー、パリSGと世界トップレベルの資金力を誇るメガクラブが争奪する状況だけに、移籍金は昨夏に1億500万ユーロ(約126億円)でマンチェスター・Uが買い戻したポール・ポグバ並み、場合によってはそれを上回るかもしれない。
 
 2015年に同じモナコからマンチェスター・Uに移ったアントニー・マルシアルに、エムバペと比較してクオリティー的に明らかに劣るにもかかわらず、ボーナスを含めれば6000万ユーロ(約72億円)を上回る高値がついたこと、プレミアリーグの移籍金相場がさらに高騰する見通しが高いことを考えると、新記録更新は決してファンタジーではないだろう。
 
 半年前には1000万ユーロ(約12億円)の値段もついていなかった若者に、いまや10倍の値札がつくようになったのはなぜか。その問いには、「価格は市場が決めるものだから」としか言いようがない。
 
 世界で最も資金力のあるクラブがこぞって獲得に乗り出してきたのだから、モナコも強気の値付けでそれに応じる。もしすべての買い手がその価格は高すぎると考えて手を引こうとすれば、モナコは値下げをせざるをえなくなる。
 
 しかし、どこかのクラブがその価格での買い取りに応じる姿勢を見せれば、競合のクラブはもっと高い金額を提示して相手を出し抜こうとするだろう。こうしてオークションが始まれば、価格は一気に吊り上がっていくものだ。
 
 つまり競合するクラブが多ければ多いほど価格が吊り上がるというのが、オークションのメカニズム。エムバペの場合は、まだ18歳という年齢にもかかわらず、リーグ・アンだけでなくチャンピオンズ・リーグのビッグマッチでも違いを作り出すプレーを見せており、しかもそのタレントは折り紙付きで、さらなる伸びしろも残されている。
 
 マンチェスター・Uやマドリーのようなクラブが、彼をどうしてもほしいと考えるのは当然だろう。
 
 5月にはマンチェスター・Uが8500万ユーロ(約102億円)でオファーしたが、1億2000万~1億4000万ユーロ(約144~168億円)を望むモナコは首を縦に振らなかった。こうなると獲得には、本当にポグバ以上が必要になるかもしれない。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト2017年5月4日号』より加筆・転載
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にジョゼップ・グアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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