【蹴球日本を考える】首位・柏の若手有望株を成長させる綱渡りの試合運びと日立台の臨場感

2017年06月05日 熊崎敬

スタメン平均年齢はJ1最年少の24.18歳。

「押し上げろ!」守護神の中村が若い最終ラインを最後尾で支える。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 現在、準々決勝が行なわれているU-20ワールドカップで、私は韓国人の声と韓国代表のプレースタイルの関係についての原稿を書いた。
「韓国人はなにかと大音声で絶叫する。この声の圧力が、前への踏み込みの深いサッカーを生み出しているのだ」と。
【U-20W杯で考える】野太い叫び声で沸くスタジアム 韓国の応援にパスサッカーは似合わない
 
 柏が8連勝を飾ったホームでの浦和戦でも、似たようなことを考えた。
 
 24.18歳。これは浦和戦での柏のスタメン平均年齢だ。今節のJ1・18チームの中で最も若い。この若い面々がリスクを恐れず最終ラインを押し上げ、高いところに踏みとどまって浦和と激しい打ち合いを繰り広げたのだ。
 
 勢い任せなところもあるが、一気に敵を押し切ろうとする柏のプレースタイルは、Jリーグ屈指の臨場感を誇る日立柏サッカー場にお似合いだ。
 
 柏では近年、若手の有望株が次々と台頭しているが、それは育成部門の充実だけが理由ではないだろう。安全地帯に留まらず、自ら好んでスリルを得ようとする試合運びが、若者たちの潜在能力を引き出している。
 
 前述したように柏は最終ラインを高く上げる。
 21歳の中谷、20歳の中山という若いセンターバックコンビがふたりでボールをつなぎながらラインを押し上げていくが、このとき左右の両サイドバックは敵陣深く上がっていることが多い。
 
 つまり、彼らは綱渡りをしている。
 
 センターバックのふたりはもちろんのこと、中盤から前もボールを失うと瞬く間にピンチにさらされる。カウンターを狙う敵の網の目をかいくぐり、一気にフィニッシュに持ち込まなければならない。
 ボールコントロールはミスできないし、サボることもできない。もちろん、判断が一瞬でも遅れたりしたら命取りだ。
 柏の面々は日々、こうした難易度の高い問題に向き合っている。それも「セコンド」に熱心でうるさいサポーターの目が光る中で。
 
 もちろんサッカーにはミスはつきもので、いつも上手く物事が運ぶわけはない。この夜も再三、浦和の逆襲にさらされた。だが、GK中村を中心に最後まで集中力を切らすことなく、J1屈指の攻撃陣を完封した。この勝利は、若いチームにとって何よりも大きな自信になるはずだ。
 
 浦和から挙げた2014年以来の白星。それはもしかすると半年後、「あれが大きかった」と振り返られる勝利になるかもしれない。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事