【コラム】チェルシーを復権させた「コンテ流マネジメント」の極意とは?

2017年05月14日 山中忍

復活劇の立役者コンテが下した決断が全ての始まりに。

タイトル奪取の喜びをサポーターと共感するコンテ。こうした熱いパーソナリティーも支持を得た要因だ。 (C) Getty Images

 昨シーズンの10位が今シーズンのプレミアリーグ王者に。
 
 たとえ一昨シーズン王者のチェルシーでも、これは激変だと言える。この開幕前の予想を遥かに上回る復活劇の最大の立役者は、新監督のアントニオ・コンテに他ならない。
 
 もちろん、あらゆる要素が絡んでの戴冠だったことは言うまでもない。
 
 昨シーズンの王者レスターから引き抜いたエヌゴロ・カンテは、PFA(イングランド・プロサッカー選手協会)とFWA(イングランド・サッカー記者協会)の双方で今シーズンの年間最優秀選手に選ばれたように、期待に違わぬ活躍を披露した。
 
 さらにプレミアリーグで15ゴール・5アシストのエデン・アザールと、21得点と決定力を発揮した主砲のジエゴ・コスタもは、リーグタイトルを獲った2年前と同様に本領を発揮した。
 
 それでもコンテの手腕は何よりも特筆に値する。優勝を決めた5月12日のWBA戦(○1-0)の前日、「10位に終わったチームが複数の問題を抱えていないはずがない」とこぼした指揮官は、それらの問題に解決策を見出してチェルシーを王座奪回へと導いたのだ。しかも、"自分らしい"やり方で――。
 
 チームを優勝への軌道に乗せ、失っていた自信を取り戻させた10月1日のハル戦(プレミア7節)からの13連勝は、3-4-3システムの基本化を機に始まった。この変更はイタリア人監督の戦術眼以上の直感による決断だった。
 
 プレシーズン時に熱心に取り組んだコンテが最も好む4-2-4システムは早々に頓挫。意中のFW獲得が実現せず攻撃陣の駒不足を理由に、開幕時は1トップで迎えざるを得なかった。
 
 というのも、開幕前にマルセイユから加入したミチ・バチュアイは、最終的に「優勝決定弾」を決める大役を果たしたが、そのWBA戦を含めてもプレミアで出場したのは18試合で、しかも全て途中出場。イタリア人指揮官のお眼鏡に適ったとは言い難かったからだ。
 
 昨シーズンは老朽化と機動力不足が目立ったDF陣も同様だ。補填したダビド・ルイス(←パリSG)とマルコス・アロンソ(←フィオレンティーナ)は、決してコンテが見定めた新戦力のファーストチョイスではなかった。実際、必然的なチームの不安定さは、開幕6戦の3勝1分け2敗という滑り出しが物語っている。
 
 とくに前半のうちに3失点を喫した6節のアーセナルでは、チーム状態の悪さを露呈し、完敗した。そこでコンテは、ユベントスやイタリア代表での実績があったものの、チェルシーでは試していなかった3バックへの切り替えに踏み切ったのである。

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