【戦評│ACL 16強決定】「スカウティング通り」浦和が攻略したWシドニーの“裏”

2017年04月28日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

相手が前からプレッシングをかけてくることは分かっていた。

R・シルバと興梠のコンビネーションは、試合を重ねるごとに成熟度を上げている。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 [ACL GS第5節]
浦和レッズ 6-1 ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ
4月26日/埼玉スタジアム
 
 DFの背後のスペースへ走り出した武藤雄樹に、柏木陽介の針の穴を通すような精度の高いロングキックが放たれる。武藤は「後ろから相手が追ってくるのが分かった。自分にマークがふたりついているので、タカが空いていると感じ取れた」とマイナスのパスを放ち、狙い通り関根貴大の先制ゴールが決まった。
 
 計算し尽くされたゴールだった。どこに誰が走り、そこでボールを受ければ、誰がどのようにフォローし、そして誰がフィニッシュに結び付けるのか——。普段の練習で身体に染み込ませてきた熟練の味と言えるコンビネーションが、ピッチ上に美しく表現された。
 
 浦和の選手たちは「スカウティング通りに、相手を攻略できた」と明かしていた。本来は4バックを採用しているウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)だが、浦和と同じ3-4-2-1にハメ込み、フィジカル勝負の戦いに持ち込もうとしてきた。
 
「立ち上がりから、シドニーが積極的に前からプレッシングをかけてくることは分かっていました。だから背後にできたスペースを狙っていた。狙い通りでした」
 
 ラインブレイクに成功した武藤はそう振り返った。まさに、してやったり。柏木によると、「武藤がGKと1対1に持ち込めるところを狙って蹴ったが、ボールが風に流され少しずれた」そうだが、結果的には、相手を翻弄することに成功。すぐさま武藤と関根で微修正し、ゴールを陥れた。
 
 加えてその1プレーで、WSWを完全に混乱に陥らせた。川崎やC大阪でプレーした楠神順平は、「ボールを奪いに行ってもかわされ、行かなければボールを回されて……。戦前にある程度は想定していた。しかし、分かっていてもやられてしまった」と振り返っていた。
 
 ホームチームは相手が動揺したところを見逃さなかった。ズラタンの2点目、李の3点目と、いずれも流れるようなパス回しを経て、右サイドから中央にポジションをとった駒井のラストパスから決まった。
 

次ページここからがスタート――。新たな冒険に向かうような高揚した雰囲気が醸し出されていた。

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