【ACL】川崎の窮地を救った男。チョン・ソンリョンが水原三星戦へ抱えていた想い

2017年04月26日 江藤高志

谷口が“神”と称えるスーパープレー。

試合終了間際のビッグセーブでチームに勝点3をもたらしたチョン・ソンリョン。古巣・水原三星との一戦にも冷静にプレーした。(C)SOCCER DIGEST

[ACLグループステージ5節]水原三星 0-1 川崎/4月25日/水原
 
 1-0で迎えた後半アディショナルタイム、川崎は絶体絶命のピンチを迎えた。セットプレーの流れからクロスを入れられると、谷口彰悟がクリアしたボールが水原三星のク・ジャリョンの足もとにこぼれ、ペナルティエリア内からシュートを放たれた。目の前で相手のシュートを見送るしかなかった谷口は「あれは時が止まったような気がしました。終わったと思いました。(すべての動きが)スローモーションに見えました」と語る。しかし、失点を覚悟したその瞬間「後ろに神がいました」と振り返る。
 
 谷口から"神"と形容されたのは川崎の守護神、チョン・ソンリョンだ。背番号1を背負う韓国人GKは、ク・ジャリョンの至近距離からのシュートに手を伸ばし、ボールをファンブルすることなくがっちり掴んだ。今大会5試合目にして、初勝利を手繰り寄せる大きなセーブだった。
 
 2011年から2015年まで水原三星でプレーしたチョン・ソンリョンにとっては、思い出の地に戻っての初めての試合だった。本人は試合後、「前に所属したチームですし、故郷にいるような感覚でした」と口にする。ただ、「試合に集中することを念頭に置いていました」と、感傷に浸らず冷静にプレーしたという。
 
 さらに、無失点勝利について聞くと、「守備の選手だけでなく、前の選手もハードワークしてくれて、サブの選手もスタッフも気持ちがひとつになり、こういう結果になったと思います」とチーム全体の奮闘を称えた。
 
 試合後、かつてのチームメイトから「なんで止めるんだ」と、冗談を飛ばされたと苦笑いした男は、ミックスゾーンでは大勢の韓国メディアに囲まれ、延々と受け答えを続けていた。
 
 ビッグプレーの直後にも大げさに喜ぶことはなく、淡々と自らの仕事を遂行する。そんなチョン・ソンリョンの活躍で、川崎がグループステージ突破へ大きな勝点3を手にした。
 
取材・文:江藤高志(川崎フットボールアディクト編集長)
 
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