【広島】衝撃的な3失点… 守護神・林が悔しさを嚙み殺して語った前向きな言葉

2017年04月23日 寺田弘幸

「自分には止めれてないっていう事実だけが残っている」

8分間で3連続失点を喫するという衝撃的な展開に、林は「僕の力不足です」と責任を一身に背負うコメントを残した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ8節]広島 3-3 仙台/4月22日/Eスタ

 守護神は責任を一身に背負っていた。
 
 ミックスゾーンで林卓人が最初に口にしたのは、「僕の力不足です」という一言。クロスをワンタッチで合わされ、それも叩きつけたシュートを浴びた2失点と、申し分ないスピードで壁を越えたFKが、バーに当たってゴールネットに吸い込まれた1失点。GKにできることはほとんどない形の3失点だったが、「自分には止めれてないっていう事実だけが残っている」と林は言い、「去年から自分らしいプレーっていうのを模索しながら戦ってはいるんですけど、今日もチームに迷惑をかけているんで悔しいです」とうなだれた。
 
 ピンチが訪れることは予想できた展開だっただけに悔しさも募る。2点をリードした広島は「守りに入るところで守りだけになってしまった」(森保監督)。梁と蜂須賀を投入して右サイドを起点に人数をかけて攻めに出てきた仙台に対して、広島はボール保持者にプレッシャーを掛けられず、容易にペナルティアエリアへの侵入を許していく。
 
 GKの出番が来るのは必然の状況となり、「みんなの足の止まり方を見たらピンチは来るだろうなってことは想像がついていたんで、自分がひと仕事したかった」。8分間で連続3失点を喫するという衝撃的な展開。チームが苦しい時に何もできなかった自分が不甲斐なく情けなく、ただただ力不足を感じるしかなかったのだ。
 
 決して自責のない3失点だったとはいえ、"当たり"がなかったことも確か。三田のFKを触ることができるGKは世界中を見渡しても稀だろうが、クロスからの2失点に関しては奇跡的なビッグセーブを起こせた可能性はある。ポジショニングやセービング技術のほかに幸運などなど様々な要素が加われば、身体のどこかに当てられたかもしれない。
 
 今季唯一の勝利を挙げた6節のG大阪戦は、まさに林がそんなビッグセーブを連発して1点のリードを守り抜いた試合だった。もっと遡れば、2015年シーズンは連戦連発の大当たりでチームをリーグ制覇に導いたGKである。"奇跡的なセーブ"は奇跡的なのだからそう起こせるわけがないのだが、そうした数々の場面を目撃し続けてきたチームメイトもサポーターもやはり奇跡を期待せずにいられない。もっとも、そんな自分を誰より期待しているのが林本人だろう。
 
「自分自身、去年からずっと自分のパフォーマンスに納得いっていない」
 林は悔しさを噛み殺してそう語ったが、決してうつむくようなことはしない。
 
「だからと言って僕は逃げ出すつもりもない。絶対に自分が良くなるって気持ちでトレーニングに臨んで試合に向かっていくことをやっていきたい」
 
 林はもがき、あがき続ける。チームの窮地を救う自分の姿を追い求めて。
 
取材・文:寺田弘幸(フリーライター)
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