バス爆破の“幻影”に苦しんだドルトムント…指揮官は「サッカーのことを考えられなくなった」

2017年04月20日 サッカーダイジェストWeb編集部

第2レグでもバスが遅延し、精神状態が最悪に。

試合後にフランスまで駆け付けたサポーターの下へ挨拶に赴いたドルトムントの面々。主将のロイスの目には涙が……。 (C) Getty Images

[チャンピオンズ・リーグ準々決勝第2レグ]モナコ 3-1 ドルトムント/4月19日(水)/ルイ二世
 
 敵地に乗り込んでの一戦に逆転をする覚悟で臨んだドルトムント。しかし、そんな彼らを阻んだのはバス爆破事件の"幻影"だったのかもしれない。
 
 ドルトムントは4月11日に開催予定だった第1レグ前に、一団を乗せたチームバスが爆破事件に遭う。死者を出すような大事には至らなかったものの、主力CBのマルク・バルトラが手首に裂傷を負った。
 
 また、翌12日に延期された試合に2-3と敗れた後には、「気持ちの部分で整理するのは難しかった」と香川真司がブログで明かすなど一種のテロ被害に遭った選手やチームへの精神的影響は計り知れなかった。
 
 そんななかで迎えた第2レグ直前、またしてもドルトムントに緊張が走る。「安全上の理由」により送迎バスの出発が遅延したのだ。
 
 今回は事件に発展せず、無事に試合会場へたどり着いたものの、指揮官のトーマス・トゥヘルは、「全くもって理想とは程遠い状態だった」と、試合前の出来事がチームのパフォーマンスに影響したと嘆いている。英国メディア『スカイ・スポーツ』が伝えた。
 
 トゥヘルは遅延発覚時について、「チーム全員がバスに乗り込んで、誘導する警察の準備も整っていた。でも、出発予定の19時15分になったにも関わらず待つように言われたんだ。16分から17分もバスの中で待たされて、考え込んでしまったよ」と、状況を説明した。さらにドイツ人指揮官は、この一件で1週間前の記憶がフラッシュバックしたとも語っている。
 
「我々は『セキュリティー上の問題』としか説明を受けなかった。爆破事件の1週間後の出来事としては最悪だ。こういう試合に向かう時は、頭をできるだけ空っぽにして試合に集中しようとするものだが、キックオフの約1時間前にサッカーのことを考えられなくなってしまった。全くもって理想とは程遠い状態となった」
 
 そんな状況下で臨んだ試合は、第1レグに続いての3失点を喫して1-3と完敗。ドルトムントはベスト8で大会を去った。
 
 もちろん、キリアン・エムバペをはじめとするアタッカー陣のスピーディーな攻撃は素晴らしく、モナコは勝利に値する出来だった。しかし、ドルトムントが精神的に万全ではなかったことも、少なからず結果に関係していると言っていいだろう。
 
 バス爆破事件の幻影に悩まされて敗れ去ったドルトムントのようなクラブを出さないためにも、今後、UEFAには万全の安全対策を講じてもらいたい。
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