【大宮】「得点がほしいなら俺だろ」。清水慎太郎が秘める闘争心と少しの心残り

2017年04月03日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「調子が良くて、周りが見え過ぎてしまった」

守護神・加藤順の負傷によって交代は取り消しに。だが、気持ちを奮い立たせて81分からピッチに立つと、積極的な仕掛けを見せた。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ・5節]大宮 0-1 鹿島/4月1日(土)/NACK
 
 64分、医療スタッフから×マークが出された。自陣ゴール前でGK加藤順大が座り込む。この瞬間、1枚目の交代カードとして準備していた清水慎太郎の投入はなくなった。
 
「マジかよ……」。身体のキレは良い。拮抗したスコアを動かせるのは自分だという自信もあった。だが、守護神の負傷とあっては仕方ない。
 
 大宮のふたり目の交代もアクシデントだった。今季初出場、初スタメンを飾って中盤の底でフィルター役を担っていた金澤慎の足が痙攣。ただ、72分の交代では清水は冷静だった。「ないかな、と思っていたから」だという。
 
 残り時間が徐々に減っていく。しかし、渋谷洋樹監督の采配は責められないだろう。ふたりがふたりとも、予定された交代ではない。慎重にならざるを得なかったのは事実だ。
 
 そんななか、79分に先制弾が生まれる。アウェー側の数字が積み上がった。0-1。清水の気持ちが再び奮える。
 
「得点がほしいなら俺だろ」

 2分後だった。ドラガン・ムルジャに代わって、今季クラブ唯一の得点をマークしている背番号14がピッチに立った。
 
「最初(加藤順が負傷交代した67分)はFWとして準備してたが、81分の段階で任されたのは左サイドハーフ。トップに入って、サイドに流れて起点になりたかったが……」
 
 それでも、王者相手でも遠慮はない。「右サイドからの攻撃が多くて、呼んでいたけど左サイドになかなか来なかった」ためボールに触れた回数は数えるほど。だが、「鹿島ファンなので、対戦をすごく楽しみにしていた」と恐れずに仕掛けた。
 
 敗戦という結果の他に心残りがある。「シュートを打てるシーンでパスを出してしまった」のだ。悔しさを滲ませながら83分の場面を振り返る。
 
「相手DFをひとり抜いてフリーになったが、(江坂)任へのクロスを選択してしまった。今の自分の状態だったら打っても良かった。調子が良くて、周りが見え過ぎてしまったのが逆にいけなかった」
 
 アディショナルタイムを含めて、15分ほどのプレー。期待された結果は残せず、「欲を言えば、もっと出たかった」。しかし、戦えた自負はなる。通用したという手応えもある。
 
「次節、期待しています」と言葉を掛けると「スタメンで出たいな。でも、出場したら絶対に結果を残しますから」と返してきた。自分のゴールで勝利を掴む――。立ち去る背中からは、雰囲気を十分に感じ取れた。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)

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