風間グランパスを支える仕事人――内田健太が見せる"J2越え"のクオリティ

2017年04月03日 今井雄一朗

なぜこの選手がJ2に埋もれていたのかと不思議に思える。

6試合すべてにフルタイム出場する内田は、名古屋における風間サッカーの申し子のひとりだ。写真:徳原隆元

 熊本を相手に5-1の大立ち回りを見せた名古屋を、時にいぶし銀に、時にド派手に支えたのが内田健太だ。
 
 本来は左サイドを主戦場とする選手だが、風間八宏監督の下では3バックのストッパーとして起用されることが多く、多彩かつパワフルな左足は、クロスというよりビルドアップにその活かし方を見出されている。
 
 プレシーズンではサブ組に入ることがほとんどだったポリバレントは、開幕戦でスタメンの座を射止めると、以来6試合すべてにフルタイム出場。時にボランチも任される多芸ぶりで、名古屋における風間サッカーの申し子のひとりとなっている。
 
 この日も前半開始早々のピンチに「ブラインドで見えなかったけど、何とかしたかった……」と反省しつつも、その後は長短のパスを蹴り分け攻撃の組み立てに貢献。左ワイドの杉本竜士がいる間は彼の縦に仕掛ける持ち味を後方でフォローしていたが、54分に杉本が交代した後には攻撃参加のリミッターを解放したかのように躍動した。
 
 68分には「これで食ってきた」と豪語する左足のFKからフェリペ・ガルシアの来日初得点をアシストすると、77分には八反田康平や和泉竜司らと高速パスワークを展開し、再びフェリペの決定機をクロスで演出している。79分のF・ガルシアの追加点をアシストした八反田のクロスも、その前を辿れば内田のスルーパスが起点である。
 
「まさに『やってやった』って感じで、(相手の守備が)来い来い来いと誘って、ハチ(八反田)がスペースに流れて、そこに足元のパスを入れて。完璧でしたね」と、内田は満足げに笑う。
 
 風間監督が説く「止める、蹴る」の重要性を、最も理解するひとりである内田は、熊本戦の大勝の要因もやはりそこにあると考える。リードされ、やや無謀にも見えるハイプレスを仕掛けてくる相手を前にして、名古屋の選手たちは良い意味での"遊び心"を持ってその勢いをいなしていた。
 
 その最たる選手が内田で、「やっぱり、『止める』ですね。止めることさえできれば、プレッシャーなんか感じないから」と完全に相手を手玉に取ってプレーしていた。「僕ひとりでふたりとか引き付けられたこともあったし、それは前の選手は本当に楽だと思う。奪われないのが前提ですが、自分に来る相手、その次の相手も見えていました」と、その充実ぶりは相当のものだ。
 
 5-1と圧倒した相手に20本のシュートを浴びせられた守備陣としては反省も多く、内田もその点では「これが最低限」と自戒を込めて言う。ただし、「もっと相手のピンチばっかりの試合にしたい」と欲も語る。
 
 佐藤寿人や永井龍、押谷祐樹らの大型補強に隠れていたが、内田健太の補強はかなりのヒットだった。なぜこの選手がJ2に埋もれていたのかと不思議に思えるほどのクオリティを、背番号39はコンスタントに見せ続けている。
 
取材・文:今井雄一朗(フリーライター)
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