【蹴球日本を考える】日本人の弱点を克服した久保。反省すべき90分に“強い個人”の輝きを見た

2017年03月29日 熊崎敬

良い意味で周りに合わせず、自分を貫くスタイルは彼自身の生き方にも重なる。

1得点・2アシストの活躍を見せた久保。そのプレースタイルは、良い意味で自分を貫ける“個の強さ”がある。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

[W杯アジア最終予選]日本 4-0 タイ/3月28日/埼玉
 
 4-0と快勝した埼玉スタジアムでのタイ戦は、スコアの割に内容の乏しいゲームだった。

 
 香川、岡崎のゴールで早々と2点を奪ったことで、日本の選手たちから集中力と運動量が低下した。プレーが雑になったことでパスミスが多発し、丁寧な組み立てを見せるタイに攻め込まれる場面が増えていった。
 
 このあたりは勝利確実という、世間の空気も影響していたと思う。油断禁物と分かっていても、早々とリードを奪ったことで気の緩みが出たのだろう。
 
 このあたりは、キャプテンの長谷部がいれば軌道修正できたかもしれない。
 攻守のリズムを創り出すボランチは、酒井高と山口。初めてのコンビであり、彼らは自分たちのプレーに手いっぱいでチーム全体を落ち着かせるだけの余裕がなかった。
 
 課題の多い勝利。ただ、もちろんいいこともあった。
 そのひとつは、ハリルホジッチ監督が反省点をしっかりと把握していたことだ。
 
「中盤でのボールとエリアのコントロールができなかった。攻めの組み立てでは選手の距離が空き、連動性がなく、ボールをつなぐことが困難だった。教訓を与えられた試合だった」
 
「勝った時ほど反省を」という言葉があるが、試合後の会見では選手たちを祝福しながらも、課題を語ることに多くの時間を割いていた。実際にアジアを出たら、この内容で快勝できるようなチームはほとんど見当たらないと思う。
 
 もうひとつ、UAE戦勝利の立役者となった久保が、この夜も1ゴール・2アシストと爆発した。
「調子のいい馬に乗れ」という言葉があるが、いまヨーロッパ組でもっとも調子のいい23歳は出番を得るごとに結果を出している。
 
 久保のいいところは、良い意味で周りに合わせず、自分を貫いているところだ。ボールを持つと貪欲に仕掛け、ゴールを狙う。ポゼッションのためではなく、ゴールを決めるためにプレーしている。
 
 この姿勢は、まだ何者でもなかった19歳の頃にヨーロッパに渡り、通訳もつけずにひとりで道を切り拓いてきた生き方にも重なる。
 
 日本人と日本サッカーが世界で勝てないのは、いつも集団で群れようとする気質があるからだ。だが久保は、この弱点を克服している。
 久保のような強い個人が増えてくると、日本代表ももう一段上に行けるのではないだろうか。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)

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