恩師が語るバロテッリ、アドリアーノら「悪童」が飛躍できない真の理由

2017年03月20日 サッカーダイジェストWeb編集部

プロとして何を目指し、求めるかは、選手によって異なる――

乗った時には誰も止められないゴールマシーンへと変貌するが、些細なことで感情をコントロールできなくなり自滅する……。「それがバロテッリだから」で終わりにしてしまうには、あまりに惜しい才能である。 (C) Getty Images

 誰からも才能を認められながら、世界のトップの座を競うことなく消えていった選手は少なくない。元ブラジル代表のFWアドリアーノはそのひとりだ。現在ニースでプレーするFWマリオ・バロテッリも、このままでは同じ結果に終わるかもしれない。
 
 類まれなるタレントを誇る彼らは、なぜ伸びやんだのだろうか。アドリアーノとバロテッリを指導した経験を持つ元イタリア代表監督のチェーザレ・プランデッリは、「そもそも本人たちが頂点に立つことを目標としていなかった」と分析している。
 
 インテルやマンチェスター・シティでタイトルを獲得したバロテッリは、プランデッリが率いたイタリア代表では主力だった。ドイツとの準決勝で2点を挙げたEURO2012での活躍は目覚ましく、鍛え上げられた上半身を披露したゴールパフォーマンスを記憶しているファンも少なくないだろう。
 
 だが、この大会を境にバロテッリのキャリアは下り坂に突入する。
 
 2大会連続グループステージ敗退という、イタリアにとって不本意な結果に終わった2014年のブラジル・ワールドカップでは、チームとの問題が騒がれ、「戦犯」として批判を浴びた。その後はクラブでも苦しみ、リバプールとミランでスランプに喘いだ。
 
 今シーズンから加わったニースで得点力をやや取り戻したが、キャリア序盤に人々が期待したほどの活躍を見せられていないことは否めない事実であろう。
 
 そのバロテッリについて、プランデッリはフランス『SFR Sport』のインタビューで、「人間的に素晴らしい男で、今でも愛情がある」と明かしつつ、次のように続けた。
 
「自分がワールドクラスの選手であることを示そうとバロテッリ本人が決意すれば、それは可能だと常に言ってきた。クオリティーに議論の余地はないからだ。おそらく、世界で五本の指に入る選手になることは、彼が人生において最も優先することではないのだろう」
 
 サッカー選手としての頂点を目指しているわけではない、ということだ。指導者として20年を超えるキャリアを誇るプランデッリは、「そういう選手はたくさんいる」と語る。その例として挙げたのが、パルマ時代に指導したアドリアーノだ。
 
 2005年のコンフェデレーションズカップで活躍し、2006年のドイツW杯でロナウド、ロナウジーニョ、カカとのカルテットが脚光を浴びたアドリアーノだが、数々の問題行動を起こしてサッカー界の最前線から姿を消していったのは周知の通りだ。
 
 プランデッリは、アドリアーノについて「世界レベルの選手だったが、おそらくは世界最強の選手になることを望んでいなかった。彼の目標はおそらく、良いキャリアを築いて少し金を稼ぎ、家族をファベーラ(スラム)から抜け出させることだったんだ」と見ている。
 
 続けて、「彼は人として自分がやったことを誇りに思うべき」と、アドリアーノの考えを尊重すべきでもあるとも主張した。
 
 バロテッリやアドリアーノは「悪童」と呼ばれる一方で、憎めないキャラクターとして扱われることも少なくない。それは、彼らがどこかで純粋な心を持ち続けているように見えることも一因だろう。
 
 徹底的に頂点を目指すことよりも、彼らはただ、サッカーを楽しみたいだけなのかもしれない。
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