【中村俊輔に直撃!②】なぜ磐田だったのか? 自らの考えをどう伝えようとしているのか?

2017年03月15日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

おばさんの一団に囲まれ記念撮影も。磐田での生活は「居心地はいい」。

磐田での生活を「居心地はいい」と語る。クラブのために全力を尽くす決意だ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

――改めて今回の移籍について聞かせてください。ただ環境を変えればいいというわけではないが、という発言が印象的でした。
 
「スポーツの本質とも言える、サッカーをする喜びとか、信頼関係とか、美談っぽい言い回しだけど、スポーツマンとして大切にしてきたものがある。その大切なものを失わないために、F・マリノスの10番とキャプテンという立場から身を引く決断をせざるを得なかった。それをわがままだと言う人がいれば、そう言ってくれて構いません。ただ当事者にしか分からないことも起きていた。それについて言葉で表現するのは難しいし、今はまだできないのかもしれないけれど、そういった状況でベストの選択が、ここに来ることでした。サッカーであり、なにより人を大切にしている。それが磐田でした」
 
――サッカーの本質的なところを見つめ直すきっかけになったということですか?
 
「うーん。でも(事態に)出くわさなければ、それはそれで良かったのかもしれない。ただ、運命だと受け止めています。磐田とは縁を感じていますから。きっと見てくれています、サッカーの神様が。この歳になってサッカーに対する姿勢や考え方、そこをもう一度深く見つめ直す機会になったのは確かです」
 
――磐田でプレーして約2か月が経ちました。環境はどうですか?
 
「静岡はサッカー番組が多い。取材も多い。サッカーが身近なんでしょうね。この間はウナギ屋でお婆さんの一団に『あ、サッカー選手だ』と囲まれ、記念撮影しました(笑)。居心地はいいです。練習場のグラウンドはベスト。森に囲まれているのが海外っぽい。あと、F・マリノスもそうでしたが、ここにはとても優秀なトレーナーが揃っています。名波さんをはじめ、コーチのヒデさん(鈴木秀人)、マコさん(田中誠)とは代表で一緒にプレーしています。それに稔(小林)さんは、桐光学園高に入学した時に3年生だった先輩。僕が学校に朝早く行くと、必ず先にいたのが稔さんでした。誰よりも朝練をしている先輩が国体や関東選抜に選ばれるのを見て、これぐらいやらないといけないんだと模範にしていた方です。素晴らしい手本となる監督やコーチがいる。これ以上の環境はないでしょ? なにより、そのスタッフの人たちが選手に近い感覚を持っているのは大きい」

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