【京都】闘莉王が早くもチームを掌握!若きアタッカーへの声掛けに凝縮されていた凄みとは?

2017年02月09日 雨堤俊祐

闘将の一声が、流れを変える一因となった。

闘莉王のコンディションは着実に上がっている。練習試合でのパフォーマンスは上々だ。写真:雨堤俊祐

 京都は2月8日、国分運動公園で福岡大と練習試合(45分×3本)を行ない、合計スコア8-1で勝利した。鹿児島キャンプで3試合目となったゲームで大きな存在感を放っていたのが田中マルクス闘莉王だ。まだチーム合流から1か月も経過していないが、早くも中心選手としての風格を漂わせている。
 
 大きな注目を集めて京都入りした闘莉王。多くのサポーターやメディアはプレーする姿を早く見たいという気持ちに駆り立てられていたが、布部陽功監督は冷静だった。
 
 今季からチームに導入されたカタパルトという測定器具を用いて収集されるデータや練習での様子などを総合的に判断し、さらに「本人のフィーリングも大事なので(闘莉王と)話していきたい」と、いわゆる"オレ流調整"を認めて実戦デビューのタイミングを計っていた。京都でのトレーニング期間(1月16日~27日)は他の選手と比べて、まだコンディションを上げている段階で、二度の練習試合にも出場せずにピッチ脇からアドバイスを送るに留めている。
 
 それが、1月29日からの鹿児島キャンプで風向きが変わった。「監督は自分のペースでやらせてくれる。(練習で)いっぱいいっぱいまでやっていないのもあるし、このやり方があっているのかな」(闘莉王)と指揮官の方針がコンディション向上を後押ししたようだ。
 
 そして、キャンプでの初戦となった清水戦で「思ったより早かった」(布部監督)実戦デビューが訪れる。多くの主力選手とともにスタメンに名を連ねると69分間プレー。4日後のFCソウル戦でも先発すると、2本目の途中で交代するはずだった当初の予定を闘莉王自身が変更し、志願して90分間を戦い抜いた。
 
 相手は昨年のKリーグ王者。ACLなどでの実績も豊富なFWデヤン・ダミヤノヴィッチらとマッチアップを繰り広げ、時には身体を投げ出した守備でピンチを防ぐなど、90分間を無失点で乗り切っている。布部監督も「まだコンディションは100パーセントではないけれど、今のところ順調にきています」と好感触を掴んでいる様子だった。
 
 そして冒頭の福岡大戦。3バックの中央に入ると、68分に交代するまで空中戦の強さやコーチングでチームを引き締め、攻撃でも正確なキックや機を見た攻撃参加で貢献している。また、試合後には競り合って負傷交代した相手選手が休んでいるバックスタンドまで出向いて声を掛ける、という気遣いを見せる一幕もあった。
 
 この試合で印象的だったのは小屋松知哉と岩崎悠人へ掛けた声だ。
 
 小屋松に対しては、相手との競り合いでボールをキープできなかった場面で叱咤激励が飛んだ。厳しい口調だったが、そこで奮起した小屋松は数分後に大黒将志の先制点をアシスト。2本目にはGKとの1対1を確実に決めて、1ゴール・1アシストという結果を残した。
 
「あの声のおかげで、そこから立て直してプレーできた。トゥーさん(闘莉王)の言っていることは正しいし、そこに自分の考えも取り入れて順応することができました」(小屋松)と振り返っている。大学生を相手になかなか先制点を奪えなかったが「思ったとおりにいかないことはある。その時に踏ん張れるか、踏ん張れないのかで全然違ってくる」(闘莉王)という闘将の一声が、流れを変える一因となった。

次ページチームが強くなる上で、闘莉王の存在が不可欠だ。

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