「やらかし」を「最強」に変えた青森山田のキャプテン住永翔、厳しくも優しい類稀なリーダーシップ

2017年01月22日 白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)

ピッチ内外のオンとオフの切り替えがうまい。

イングランド遠征でインタビューに答えてくれた住永。独自のリーダー論を語り尽した。写真:ナイキ

 1月16日から21日にかけて、JFAとナイキの全面協力を受けて青森山田高校がイングランド遠征を行なった。
 
 高円宮杯U-18プレミアリーグと全国高校選手権の二冠を達成した日本ユース最強軍団は、幾多のプロフットボーラーを輩出しているプロ養成機関『ナイキアカデミー』と0-0で引き分けると、中村俊輔のセルティック時代の恩師ゴードン・ストラカン(現スコットランド代表監督)が運営する『ストラカン・フットボール・ファンデーション』を4-0で一蹴。1勝1分けで帰国の途に就いた。
 
 密着取材をする中で感じたのが、彼らのオンとオフの切り替え。ピッチ内では試合中に「痛くねえだろ! 早く立て!」、「ここに出せ!」、「そんなパスが通るか!」、「まだ走れるだろ!」、「それを決めないでなにがフォワードだ!」とお互いに強い口調で要求し合う。
                       
 しかし、一旦ピッチを離れれば一転して和気あいあい。冗談を飛ばし合って笑いが起こる普通の高校生に戻る。しかも、試合中に激しく言い争った後でも、それをまったく引きずる素振りすらない。
 
 まさに絵に描いたような理想的な集団だが、簡単にこんな雰囲気が形成されたとは思えない。実際、アンカーとして攻守の要に君臨する一方、キャプテンとしてチームをまとめてきた住永翔はこう振り返ってくれた。
 
「1年の時から"やらかし"が多い世代というか、まとまれば強いけど、個性が強すぎてそれぞれでやりすぎる面が強かったんです。人の話を聞かなかったり、相手の気持ちを考えずに強く言い過ぎてしまったり、ふざけすぎてしまったりしていました」
 
 GKの廣末陸、DFの三国スティビアエブスや橋本恭輔、MFの高橋壱晟と嵯峨理久、FW鳴海彰人(廣末はFC東京、高橋はジェフ千葉と契約を結ぶJクラブに合流したため今遠征は不参加)とタレントが揃う一方、個性派ゆえ組織力に難を抱えていた。新チームが発足した当初には、コーチ陣から「この代は歴代最弱じゃなくて、歴代最低だ」とまで言われる始末だったという。キャプテンとして責任を感じた住永は思い悩んだ。

次ページ転機となったインターハイでの敗戦。

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