来季J2で指揮を執る3人のスペイン系監督とはいかなる人物か。東京Vは実績十分の名将を招聘

2016年12月28日 小宮良之

実績十分のロティーナはスペイン人監督ながら守備を重視。

左からロティーナ氏、エスナイデル氏、R・ロドリゲス氏。3人のスペイン系指揮官は来季、どのような采配を見せるだろうか。(C) Getty Images

 東京ヴェルディのミゲル・アンヘル・ロティーナ、ジェフ千葉のフアン・エスナイデル、徳島ヴォルティスのリカルド・ ロドリゲス。果たして3人の"スペイン系監督" は、J2で成功を収められるのだろうか?
 
 まず、スペイン人の名将ロティーナの経歴は目映ゆい。オサスナなどを1部に昇格させたのを皮切りに、2003-04シーズンにはセルタをチャンピオンズ・リーグでベスト16に導き、エスパニョールではスペイン国王杯を制覇。今年は、カタール2部のクラブを1部に昇格させている。
 
 一方、ロドリゲスは無名のスペイン人監督だ。 オビエドの下部組織で地道に指導経験を積んだあと、レアル・マドリーのサッカースクールやジローナ、マラガ、サウジアラビア代表のコーチ(U-17代表監督も)を歴任。14年からタイで3チームを率いたものの目立った実績はない。
 
 エスナイデルはアルゼンチン人だが、選手生活の多くをスペインで過ごした。現役時代は、 サラゴサ、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリーなど名門に所属。監督転身後は11-12シーズンにサラゴサBを3部に残留させたが、その後は2部のコルドバで途中解任、1部のヘタフェでは降格を味わった。
 
 3人には意外にも共通点がない。しかし、彼らがJ2で注意すべき点は同じだろう。「J2の選手は、リーガの選手とはまるで違う」という点だ。
 
 リーガの指導者が日本人を見る場合、「これができるなら、当然あれもできる」と判断するが、日本人は"当然のあれ"ができない。例えばハーフナー・マイクがコルドバに所属した際、「高さがあって足もとも上手い。当然マークを外す力もある」と関係者は期待したが、当てが外れた。またスペインでの指導歴が長いハビエル・アギーレ前日本代表監督も当初スカウティングを見誤って、見当違いの選手を招集した。
 
 スカウティングの調整は不可欠だろう。もっとも、ロティーナは歴戦の指揮官だけに適応力も高い。「スペインサッカー」には華やかな印象があるが、彼は重厚な守備を基盤とする。デポルティボ時代は5バックを採用するなど、「守備の安定が良い攻撃を生む」という哲学の持ち主で、勝負弱さのある東京Vを鍛え直すにはもってこいの人材だろう。
 
 ロドリゲスはコーチやユース年代の監督の経験がほとんどで、一抹の不安が残る。エスナイデルも監督経験が浅く、賽を振らないと目が出ない。アルゼンチン人特有の戦闘を好む気質が、大人しい千葉の選手と調和するか。
 
 ただ、ひとつ言えるのは、「スペイン人監督」 が世界中でブランド化されつつあることだろう。 ジョゼップ・グアルディオラ、 ウナイ・エメリらの名前は轟くが、彼らだけではない。グレゴリオ・マンサーノ(中国)、ギジェルモ・アモール(オーストラリア)、アントニオ・ロペス(インド)らはアジアなどでタイトルを勝ち取り(カップ戦含め)、声望を高めている。
 
 ロティーナ、ロドリゲス、エスナイデルが、スペインから日本への新たな"航路"を開いても不思議はない。
 
文:小宮良之
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