「新しい乾貴士」誕生のキッカケとなった岡崎慎司のアドバイス

2016年12月05日 豊福晋

「監督はクロスを上げろ、というけど……」の葛藤が。

ここ6試合連続でスタメンに名を連ね、直近2試合ではアシストも記録している乾。ここにきて一気に評価を高めている。(C)Getty Images

 エイバル入団2年目を迎えた乾貴士の評価が、急上昇している。
 
 リーガ・エスパニョーラでは6試合連続の先発出場。とりわけ圧巻だったのが、11月25日のベティス戦のパフォーマンスだ。左サイドで何度も攻撃の起点となり、2得点に絡む活躍。持ち味である高いテクニックを存分に見せつけ、スタンドからは喝采が浴びた。
 
 この試合における乾はスペイン・メディアでも高く評価され、『マルカ』紙は同節のベスト11に選出している。
 
 11月29日のスポルティング・ヒホン(コパ・デル・レイ)でも途中出場し、左サイドから決勝点の起点に。さらに12月4日のアスレティック・ビルバオ戦(リーガ14節)でも70分、裏に抜け出してヘディングで中央に繋いでセルジ・エンリチュのゴールをアシストした。
 
 現在のエイバルの攻撃は、乾のいる左サイドが大きなポイントになっていると言っても過言ではないだろう。
 
 乾は序盤戦、苦しい戦いを強いられていた。開幕戦は先発こそしたものの、試合後のその表情は暗かった。チームも、乾自身のパフォーマンスも決して思わしくなかった。
 
 やがて秋にかけて乾は、難しい時期を過ごすことになる。ベンチ外が4試合もあるなど、ホセ・ルイス・メンディリバル監督に評価されていないのではないかとさえ言われた。
 
 抱えていた葛藤の一つは、サイドの攻め方だ。昨シーズン終盤からメンディリバル監督は、乾らサイドハーフの選手に「深くサイドを攻め込んだらクロスを上げろ」と指示を出している。得意のドリブルで中に切れ込んで勝負したい乾とは、この点で意見の相違があった。
 
「監督はクロスを上げろ、というけど……」
 
 乾は何度もそう口にしてきた。結果、指示通りクロスを考えるあまり、自身の持ち味である思い切りの良さやドリブルでの仕掛けが影を潜めるようになっていた。
 
 しかし、サッカーでは意外なことが流れを変える。乾の場合、再びチャンスが訪れたのは、守備面での貢献が評価されたからだった。

次ページ本人いわく岡崎の言葉で「吹っ切れた」。

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