森﨑浩司の引退に元チームメイトの李漢宰も涙。“戦友”の壮絶なサッカー人生に馳せる想いとは?

2016年10月31日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「引退セレモニーを見た時は、自分も思わず涙するくらい、ウルっと来るものがあった」

李漢宰(右)にとって、1学年上の森﨑浩(左)は偉大な先輩であり、苦楽をともにした“戦友”だ。写真は2004年4月の市原戦で、森﨑浩のゴールを祝うふたり。 (C)J.LEAGUE PHOTOS

 10月29日、サンフレッチェ広島の象徴的存在のひとりである森﨑浩司が、引退セレモニーを行なった。2度のJ2降格や3度のJ1優勝、そして怪我や体調不良――。様々な想いが交錯し、レフティは涙ながらにスピーチしたが、その言葉はおよそ700キロ離れた遠い町田の地にも届いていた。
 
 現在、J2のFC町田ゼルビアに所属する李漢宰は、2001年に広島でJリーガーとしてのキャリアをスタートさせた。以降、9年間に渡って広島でプレーし、森﨑浩と悲しみや喜びを分かち合った"戦友"のひとりである。1学年上の偉大な先輩が引退すると聞き、複雑な感情が駆け巡ったという。
 
「浩司さんのキャリア17年のうち、半分以上にあたる9年間を一緒に過ごしました。本当に感慨深いものがあるし、悲しい気持ちにもなります。(セレモニーが行なわれた16節の)福岡戦でゴールを決めるあたりは、さすがだなと。(映像で)引退セレモニーを見た時は、自分も思わず涙するくらい、ウルっと来るものがありました」
 
 浩司、そして和幸の「森﨑兄弟」には、同じ選手として完成度の違いに驚かされるとともに、学ぶものがたくさんあったという。「本当に上手かった」――。そんなセリフが何度も李漢宰の口を突いた。
 
「本当に上手かったんですよ。浩司さん、カズさん(和幸)は基礎技術がしっかりしていて、守備も攻撃もできてすべての能力が非常に高い。(日本)代表に選ばれないのがおかしいくらいでした」
 
 そんな森﨑浩を苦しめたのが、2008年から2014年まで断続的に続いた難病「オーバートレーニング症候群」だ。李漢宰は2010年にコンサドーレ札幌に移籍するまで、その壮絶な戦いを間近で目の当たりにしている。だからこそ、「(病気がなければ)もっともっとできたという気持ちもありますね」と森﨑浩への想いを綴る。
 
「兄のカズさんを含め、彼らにしか分からない苦しさが絶対にあったと思います(編集部・注/森﨑和は慢性疲労症候群を発症して09年5月に離脱。同年9月に実戦復帰)。何回も(病気を)克服して、良い時も悪い時もサンフレッチェを支えてきてくれたことに、心から感謝したい」

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