【浦和】高まる三冠への期待。“大人になった”柏木は歴代の凄腕たちに肩を並べられるか

2016年10月18日 河野 正

昨季までの抱負とは一変。「もう欲をかかないことにした」

浦和移籍後初めてのタイトルを獲得した柏木。現在の勢いなら一気に三冠を獲得する可能性も。(C) SOCCER DIGEST

 日本人としては、福永泰以来となる浦和レッズの2代目背番号10が、"3度目の正直"をホームの埼玉スタジアムで結実させた。
 
 2007年のアジア・チャンピオンズリーグを最後にタイトルから見放されてきた浦和が今季、大会名をルヴァンカップと改めた旧称ナビスコカップで優勝した。12年に着任し、5年目の指揮を執るミハイロ・ペトロヴィッチ監督にとっては、06年途中からサンフレッチェ広島を率い、日本で10年目にして味わう初の美酒となった。
 
 この人の薫陶を受け、自ら「お父さん」と慕う柏木陽介にとってもプロのキャリアをスタートさせて10年目、広島から浦和に移籍して7年目での初タイトルである。柏木は旧ナビスコ杯決勝に過去2度出場して2連敗。ボランチで120分出た11年は、鹿島アントラーズに延長の末0-1で敗れ、シャドーでフル出場した13年は柏レイソルに同じく0-1で惜敗していた。
 
 昨季のチャンピオンシップ(CS)準決勝で屈し、今年の天皇杯決勝でも負けたガンバ大阪が決戦の相手。さらに14年のリーグ32節で、G大阪に勝てば優勝という状況にありながら、完敗して逆転優勝をさらわれた因縁深い相手との顔合わせだった。
 
 17分に先制されたが、「負けていても攻め急がなくなったのが成長したところかな。点は取れると思っていたから、落ち着いてできた」と事もなげに語る。チーム同様、酸いも甘いも噛み分けてきた柏木が高い水準へとステップアップしている。
 
 浦和はリーグカップで、過去5度決勝に進みながら1勝4敗。唯一勝ったのが03年、4-0で鹿島を倒した決勝だ。この試合で攻撃の舵を取ったのは山瀬功治だ。初のリーグ王者に栄達した06年、日本勢で初めてアジアの頂点に達した07年の司令塔はロブソン・ポンテ。古くは95年、福田正博に日本人初のJリーグ得点王をもたらした魔術師、ウーベ・バインといった中盤の王様がいた。
 
 柏木は、こうした歴代スゴ腕の司令塔と肩を並べつつある。
 
 勝負弱いと言われたチームが、一発勝負の決勝に勝った。この勢いを持続できれば、CSや天皇杯も制してクラブ未経験の三冠の可能性も膨らむ。だが背番号10はプレーと同じく、考え方も冷静になった。
 
「もう欲をかかないことにした。目の前の一戦、目の前の大会に全力を出すだけ。欲張るとロクなことがないからね」と昨季までの抱負から一変した。
 
 サッカーマンとしても大人になった柏木は、「周ちゃん(西川周作)をねぎらった後、監督に声を掛けたら自然と涙が落ちてきた」と感慨深そうに話した。本人は慎重でも大黒柱の成長ぶりを見れば、三冠への期待は高まるばかりだ。
 
取材・文:河野 正(フリーライター)
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