マルディーニがミランの幹部就任オファーを拒否…その理由とは?

2016年10月12日 サッカーダイジェストWeb編集部

「“ただのバンディエーラ”のようになることは受け入れられない」

2009年の現役引退後、マルディーニはパリSGやチェルシーなど様々なクラブから幹部就任のオファーを受けたがいずれも拒否。古巣ミランから届いた今回の要請も固辞した。(C)Getty Images

 ミランとミラニスタの希望は、儚くも打ち砕かれた。クラブOBで元イタリア代表DFのパオロ・マルディーニが10月11日、自身の『フェイスブック』内でTD(テクニカルディレクター)の就任オファーを拒否したことを発表したのだ。
 
 すでに現オーナーのシルビオ・ベルルスコーニとミラン買収の仮契約を交わしている中国資本『シノ・ヨーロッパ・スポーツ』は、今年中が見込まれる正式調印を前に、CEO兼GD(ゼネラルディレクター)に前インテルGDのマルコ・ファッソーネ、SD(スポーツディレクター)には同じくインテルでスカウティング責任者を務めていたマッシミリアーノ・ミラベッリを選定した。
 
 さらに中国資本は、インテルでハビエル・サネッティ副会長、ユベントスでパベル・ネドベド副会長が担っているようなクラブの歴史と伝統を代表する対外的な顔役として、マルディーニに白羽の矢を立て、ファッソーネを橋渡し役にTD就任をオファーしたのだ。
 
 1978年の下部組織入団から2009年の現役引退まで、31年間に渡ってロッソネーロ一筋を貫いたスーパーレジェンドが帰還するとなれば、新時代を迎えるクラブにとってこれ以上ない大きなアピールとなる。さらにマルディーニにとっても、ファッソーネとミラベッリの幹部就任で自身と犬猿の仲であるアドリアーノ・ガッリアーニ副会長が追い出される可能性が高いため、悪くないオファーと見られていた。
 
 しかし、マルディーニはこれを固辞。コメントの冒頭には次のように綴っている。
 
「私にとってミランはずっとハートや情熱だ。父や息子たちの歴史がそれを示している。我々とミラン・カラーの絆を打ち消せる者はいない。まさにその強い絆から、私はオファーされた仕事に対して、慎重かつ正確に、そしてプロフェッショナルに検討しなければいけない。感情に流されて未来を想定せずにイエスと答え、新たな冒険を始める方がずっと簡単だろう。しかし、私にそれはできない。人生を通じて私とともにあった価値、情熱と意欲を持つ真剣なサポーターたち、そしてミランと私自身を尊重する必要がある」
 
 一部では「金銭的な点で合意できなかった」、「ガッリアーニのようなチーム強化の全権を要求したが、これが通らなかった」との報道もあったが、いずれも完全否定。大きな鍵となったのはその"役割"であり、単なる"お飾り"になるつもりはなかったと主張する。
 
「私は金銭的なリクエストをまったく出していない。最初の会合から、役割の定義が重要な鍵になる、そして"ただのバンディエーラ(旗頭)"のようになることは受け入れられない、と繰り返してきた。"ガッリアーニ風"の役割、すなわち全権を持つCEOという役職を求めたこともない。しかし、示された組織図によれば、TDの私はあらゆるプロジェクトや選手たちの売買を同格のSDと共有し、もし意見が割れた場合はファッソーネが最終決定するというものだった。これでは、勝者のチームとなるための前提条件がないと思う。私はサッカーの歴史を作ったチームの一員だった。あの時を再現するには、クラブ内のコンセンサスと明確な役割分担、そして大きな投資が必要だと思う。CEOが2人体制だった近年を教訓とすべきだ。もしTDを引き受けていれば、何の決定権も持たないにもかかわらず、私はスポーツ面の全責任を負わなければいけなかっただろう」

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