【仙台】今季もJ1残留をその手に。とある3選手が引き出したR・ロペスの大爆発

2016年10月03日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「鳥栖はボールサイドと逆が空くっていうのは分かっていた」(藤村)

鳥栖の守備の癖をしっかりと突いた藤村。足もとのテクニックの高さはもちろん、サッカーIQの高さも魅力のひとつだ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

[J1第2ステージ14節]鳥栖 2-3 仙台/10月1日/ベアスタ
 
 今節まで6戦勝ちなし(J1リーグで1分4敗、天皇杯で1敗)。8月13日に行われたJ1第2ステージ8節・柏戦(○4-2)以来の勝利は、ハモン・ロペスのハットトリックによって引き寄せられたと言っていい。同時に来季もJ1で戦う権利も手に入れた。
 
 敵将のマッシモ・フィッカデンティも舌を巻くパフォーマンスを見せたブラジル人FWだが、その活躍の裏には、とある3人の選手の存在がある。
 
 不動のボランチとして中盤に鎮座する富田晋伍。確かな足もとの技術とポリバレント性で本職ではない左SBに定着した藤村慶太。そしてフレッシュさをチームに注入するプロ2年目の西村拓真だ。
 
 まずは26分に生まれた1点目。西村拓真が身体を当ててボールを奪い、富田へとつなぎ、スルーパスにR・ロペスが抜け出してゴールを決めたシーン。
 
 パスのコースを読み切った西村のボールハントを見るや、富田は首を振って周囲を確認。鳥栖の鎌田大地、高橋義希、早坂良太のトライアングルの間へと走り出した。西村から出されたボールを完璧なファーストタッチでコントロールすると、間髪を入れずに縦へ。
 
 一度は裏へと抜け出そうとして動き直したR・ロペスの前にできたスペースを見逃さなかった。実は「描いていたイメージとパスの強さが合ってなかった」(富田)が、そのR・ロペスにボールが当たって丁度良いパスになったラッキーも躊躇のない判断があったからこそ。
 
 続いて、55分の2点目はどうだろうか。実はここでも西村を始点としている。右サイドからのスローインを受けると、ファウルを獲得した。次の瞬間、富田がボールをセットしてクイックリスタート。サイドチェンジした先にいたのが藤村だった。
 
 利き足とは違う左足でクロス。ファーに待っていたR・ロペスにドンピシャで合わせ、ゴールネットが揺れた。右から左へ、左から右へ、そして左サイドネットへ。ピッチを横断したボールは仙台に再び歓喜をもたらした。
 
「事前に主審の特徴など、情報を頭に入れてあった。『ゲームを遅らせるようなプレーをするとカードが出るぞ』とか。だから、リスタートでは早くできるところはやろうという共通認識がチームにあって、2得点目はそれが成果として出た。
 
 鳥栖はボールサイドに寄るディフェンスをしてくる。だから逆サイドが空くのは分かっていたし、パッと見たら(藤村)慶太が上がってきていた。その前に広大なスペースもあったから咄嗟の判断で出した」(富田)
 
「鳥栖はボールサイドと逆が空くっていうのは分かっていたので、狙い通り。いいボールがきたので余裕を持ってゴール前を確認できて、奥にいるハモン(・ロペス)が少し浮いているのも見えた」(藤村)
 
 審判の癖も含めた事前情報の共有と相互理解。そして、献身性と高い戦術眼、それを確実に実行する技術。もちろんR・ロペスの決定力も忘れてはならない。前線、中盤、最終ラインの連動性が、流れを大きく引き寄せるゴールを生んだのだ。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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