【鳥栖】孤高の天才・鎌田の切なる要求。「もっと俺にボールをくれ」

2016年09月19日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「攻撃はもっとできる。得点にこだわって、チームのために結果を残すだけ」

広島の2ボランチに動きを封じられた鎌田。いかにペナルティエリア付近でボールを受けるかが目下の課題だ。 写真:徳原隆元

[J1第2ステージ12節]鳥栖2-3広島/9月17日/ベアスタ

 第2ステージ優勝に望みをつなぐためにも、負けられない一戦だった鳥栖は、前節の浦和戦に続き、前線は2トップに豊田陽平とムスタファ・エル・カビル、トップ下に鎌田大地を配置した。しかし、攻撃の起点として期待された鎌田は本来の輝きを放てず、チームもホームで手痛い敗戦(2-3)を喫してしまった。
 
 立ち上がりから広島の2ボランチ(青山敏弘、丸谷拓也)に中央を絞められ、思うように中盤からの縦パスが入らない。攻撃が手詰まりになるのを見かねて、センターサークル付近まで下りてボールを受けるシーンが増えてしまった。鎌田はアタッキングサード、さらに言えばペナルティエリア付近でプレーしてこそ、相手に怖さを与えられる選手。広島からすれば、低い位置でボールを持たせるのはある程度OKという認識だったに違いない。

 何度かボールを要求するジェスチャーを見せながら、パスが出て来なかったことを問うと、「(もっと)俺にボールをくれ、といつも思っています」と真っすぐに答える。決して多くを語るタイプではないが、ボールさえ持てれば仕事はできるという自信が伺える。実際、30分に右サイドでM・エル・カビルの縦パスに抜け出すと、鋭い切り返しで柏好文のマークを振り切り、独力でチャンスを作り出している。

 ただその一方で、「でも……」と自分自身にも改善点があると分析する。
 
「自分でも、もっと上手くボールをもらいに行かないといけない。(僕が低い位置に)下がるのはウチとしてはあまり良くないので、ペナルティエリア付近でボールを持てるようになりたいです」
 
 鎌田が第2ステージで得点を挙げたのは、いずれも年間勝点で中位以下のクラブ(神戸、福岡、磐田)。直近2試合の浦和、広島に対しては完全に封じ込められた。2年目の今季は確かな成長を刻んでいるとはいえ、もうひとつ上のステージに行くためには、より強力な相手(上位陣)に結果を残さなければいけない。それは本人も自覚しているようだ。
 
「攻撃はもっとできる。得点にこだわって、チームのために結果を残すだけです」
 
 鳥栖の今季、そして将来の命運は、希代のアタッカーの覚醒に懸かっている。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
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