元日本代表CB栗原勇蔵の充実感。1アシストに見えたプロ15年目の意地と復活への気配

2016年09月18日 橋本啓(サッカーダイジェスト)

チームに余裕を生んだ価値あるワンプレー。

ここ2シーズンは控えに甘んじているCB栗原。それでも、先発復帰を果たしたここ2試合では安定感を示している。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第2ステージ12節]横浜3-1新潟/9月17日/日産ス
 
 リーグ戦では7月13日の神戸戦以来、約2か月ぶりにホームで白星を挙げた横浜の最終ラインには「背番号4」が君臨していた。
 
 横浜ひと筋でプロ15年目を迎え、9月18日で33歳になったばかり。日本代表としても20試合に出場しているベテランの栗原勇蔵だが、モンバエルツ体制下となった昨季から徐々に出番が減り、今季は前節終了時点で5試合の先発に止まっていた。
 
 しかし、CBのファビオが負傷したため前節の仙台戦で先発復帰を果たすと、冷静な判断と力強い守備で完封勝利に貢献。2試合連続でスタメンに名を連ねたこの日も、スピード豊かな新潟のラファエル・シルバとの勝負も粘り強く対応するなど、安定したプレーで最終ラインを支えた。
 
 そして、最大の見せ場となったのが48分のプレーだ。横浜の攻勢が続くなかで高い位置に侵入していた栗原は、味方のクロスがゴール前でクリアされたセカンドボールに対しいち早く反応。鋭いインターセプトからフリーで待ち構えていた中町公祐にラストパスを通し、チーム2点目をお膳立てした。
 
 このワンプレーを、本人はこう振り返る。
 
「チームで一番厳しくというか、しつこく言われているのがあの守備なので、そこを忠実にやれたということと、それがゴールにつながったので良かったです。
 
 すぐにプレスに行って奪い返す部分は、監督が就任して1年ちょっと経つけど、いまだにビデオで見させられているところ。意外とそこができていないチームは多い。今日に関しては、相手より先に反応できて、なおかつ、良いポジショニングだったしそれがゴールにつながった。あの得点でだいぶ楽にゲームを進められたと思うし、そういう細かいところが大事だというのを改めて実感しました」
 
 アシストについては、「マチ(中町)が、練習でも何本かに一本決められたらいいかなっていう難しいシュートを入れてくれただけで、ラッキーでした」と謙遜するが、いずれにせよ、機転を利かせた栗原のプレーに価値があったのは間違いない。それは、「良い時間帯に2-0になって余裕が生まれた」(兵藤)との言葉からも窺い知れる。本人としては、今後のポジション争いにおいて良いアピールにつながったはずだろう。
 
 それでも、本人は平静を装う。年齢に話を向けられると、「やばいっすね。ひと昔前だったら、とっくに引退しているんじゃないかな」と自虐的なコメントも残した。ただ、充実感に溢れたその表情からは「まだまだやれる」との意地が伝わってくるのも確かだ。
 
「(上位チームとの)勝点差もそこまでないし、(第2ステージ)優勝の可能性もあるので貪欲にそこを狙っていければと思います」

 ようやくチャンスを掴み始めたCBの闘争心は、今後さらに上昇する気配を見せている。

取材・文:橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)
 
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