【大宮】平凡なボランチの愛と意地――金澤慎が辿り着いたJ1通算200試合出場

2016年09月18日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「大宮への愛を歌う」Mr.アルディージャは勝利にも反省を口にする。

金澤がJ1通算200試合出場を達成。自身のメモリアルマッチを勝利で飾った。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第2ステージ12節]大宮 3-2 川崎/9月17日/熊谷陸
 
 決して、派手なプレースタイルではない。
 
 強烈なミドルシュートを持っているわけではなく、決定機を演出するラストパスが代名詞なわけでもない。強靭な肉体で相手の攻撃を撥ね返すことも、エアバトルを圧倒的なフィジカルで制することもない。
 
 豊富な運動量を生かした献身的な動き。他の選手が空けたスペースを黙々と埋め、時には身体を投げ出してボールを奪取する。ただただ泥臭く、ただただ目の前のプレーに集中する。
 
 誤解を恐れずに言えば、金澤慎はJリーグの中でも平凡なボランチと言える。しかし、その心に宿す「大宮への愛」は誰にも負けない。負けるはずがない。

 ユース1期生として、2003年に大宮とプロ契約。在籍は現所属選手最長の13年目になる。06年、07年に東京Vへ期限付き移籍で修行していた以外は、常にオレンジのユニホームに袖を通してきた。

 その生き様は、まさに「Mr.アルディージャ」――。そんな呼び名がしっくりくる。サポーターにも愛される男がJ1通算200試合出場を達成し、しかも年間勝点トップの川崎を相手に、勝利でその記録に華を添えている。
 
 ただ、本人はその記録もどこ吹く風だ。激しく、見る者を惹きつける熱量の伴ったゲームを終えて姿を現わした金澤はいたって冷静。むしろ、唇を噛むような仕草をしてみせた。
 
「本当にいい形で200試合出場達成を飾れたとは思うけど、だからどうこうっていうのはない。感慨深さより、今日のプレーに対する反省のほうが大きくて……。前半は特にミスが多く、守備面で良いコーチングをしてあげられなかった。相手が(36分の大久保嘉人の退場で)10人になってから2点も奪われていますしね」
 
 もちろんプロとして生き続けられたからこその記録に嬉しさはあるはず。しかし、勝利のなかにも反省点を見出す。記録達成を単純に喜ぶこともない。
 
 見つめているのは、その試合で自分が、チームがどのような戦いをできたかだ。この姿勢が、ゆっくりとでも一歩一歩進んできた金澤をJリーグの舞台から弾き出さずにいるのだろう。

「J1でのチーム最多勝点(45)を超えたが、今季の目標(勝点48以上)を成し遂げてはいない。そこを目指して頑張っていきたい」

 締めも、"らしい"言葉だった。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事