【鹿島|采配検証】一枚のカードで3つのポジションを変える大岩剛のチームマネジメントとは?

2016年08月28日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

狙い通りではあったが、リスクもあった二枚目のカード。

体調不良でベンチ入りが叶わなかった石井監督に代わり、指揮を執った大岩コーチ。変化に富むチームマネジメントで勝点1を掴み取った。(C)J.LEAGUE PHOTOS

[J1 第2ステージ10節]
横浜F・マリノス 2-2 鹿島アントラーズ
8月27日/日産スタジアム

 2連勝で迎えた横浜との一戦で、鹿島は28分、鈴木優磨の3試合連続となるゴールで幸先良くリードを奪う。しかし、前半終了間際、一瞬の隙を突かれて同点に。
 
 後半開始早々には、金崎夢生の強烈なミドルで相手GKを慌てさせる。これでペースを掴むかと思われたが……。
 
 最終的には、2-2のドローで決着。テンションの高いゲームではあったが、粘り強く勝点1をもぎとった鹿島の戦いぶりと大岩剛コーチの采配を、3つのフェーズで切り取って考察する。

▼フェーズ1(52分)
左サイドハーフ:土居聖真(OUT)→柴崎 岳
ボランチ:柴崎 岳→永木亮太(IN)
 
 最初に動いたのは、鹿島だった。1-1で迎えた52分、前半に負傷していた左サイドハーフの土居に代えて、ボランチの永木を送り込む。この交代によって、ボランチで先発していた柴崎が左サイドハーフに移動し、永木はそのままボランチに入った。
 
 アクシデントによる交代策だったとはいえ、この変更は効果的だったとは思えない。柴崎は左サイドにプレーが限定されると、ボールに触れる回数が激減。それまで巧みなパス捌きを見せていた背番号10の怖さは薄れていった印象だ。

 60分以降は横浜がペースを握り始める。押し込まれる時間帯が長くなってきた鹿島は、二枚目のカードを切った。
 
▼フェーズ2(73分)
右SB:西 大伍→伊東幸敏(IN)
右サイドハーフ:鈴木優磨→西 大伍
FW:赤﨑秀平(OUT)→鈴木優磨

 金崎夢生と2トップを組んでいた赤﨑をベンチに下げ、右SBの伊東を投入すると、3つのポジションが変わった。この交代の意図を、鹿島の指揮官は次のように説明する。

「齋藤学選手への対応、あとは、西のイエローカードも含めて、そこを上手く回転させたかった。試合前から、伊東に対しては、ああいう場合もあるということを伝えていて、赤﨑が負傷したというのもありますけど、狙い通りに伊東が活性化してくれたと評価しています」

 たしかに、"狙い通り"ではあった。積極的に前にいる西を追い越して、果敢なオーバーラップを仕掛ける伊東の存在は、劣勢だった鹿島を蘇らせた。
 
 もっとも、リスクのある采配でもあった。すでに警告を受けている西をそのままピッチに残し、今季初となるサイドハーフでの起用は、ある意味、賭けでもあったはず。しかし、もともとは中盤の選手である西は見事な対応力を見せ、思い切り良く飛び出していく伊東に好パスを配球していた。
 
 鹿島は右サイドから押し込む場面が増えていったが、「齋藤学への対応」という点では、見通しが甘かった。80分、最も警戒していたはずの選手に、自分たちのミスからボールを渡してしまうと、そのままドリブルで独走を許し、逆転ゴールを決められてしまう。
 
 リードされた鹿島はすかさず、最後のカードを切った。

次ページ「あれが選手交代だな、と思った」(西)。

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