岐阜は柏木陽介にとって「導かれてきた土地」。盛大な引退試合はミッションの続き「環境を整えたいと思っています」

2025年12月22日 小崎仁久

PKでは余裕のパネンカ

岐阜で引退試合を行なった柏木。フルタイム出場で随所に“らしさ”を披露した。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

 2023シーズンで18年に渡る現役生活に終止符を打った柏木陽介。現役時代、代表として国際Aマッチ出場11試合、浦和時代のアジア・チャンピオンズリーグ制覇、同大会のMVPにも選ばれ、アジアナンバーワンプレーヤーの称号を得た男が、12月21日に引退試合を行なった。

 人生の区切りとなるゲームの場所に選んだのは、長良川競技場(岐阜県岐阜市)。柏木が現役最後の3シーズンをプレーしたクラブ、FC岐阜のホームグラウンドである。試合はあいにくの雨模様で、時折風雨が強く吹きつける天候となったが、スタンドには1万5千人を超えるファン・サポーターが集まり、稀代のファンタジスタの最後のプレーを目に焼きつけた。

 引退試合にあたり、柏木の呼びかけに応えたのは、本田圭佑、香川真司、内田篤人をはじめとするスタープレーヤーや、槙野智章や髙萩洋次郎など、柏木が盟友と呼ぶ選手たち40数人だ。

 2チームに分かれ「YOSUKE FRIENDS」の監督にはミハイロ・ペトロヴィッチ、「KASHIWAGI GENERATIONS」はラモス瑠偉が指揮を執った。キックインセレモニーにはタレントの加藤茶さんが駆けつけるなど、柏木の交友関係の広さ、プレーヤーとしてだけでなく人柄をも証明するメンバーとなった。

 40分ハーフで行なわれたゲームでは、柏木は「ガチでいく」という事前の宣言通り、両チームのユニホームを取っ替え引っ替えしながらフル出場。緩急をつけて間を作り、時間を止めるパスを供給。広い視野でゲームをコントロールするなど随所に「柏木らしい」プレーを見せつけた。

 ハイライトは前半35分、フィールド中央から前線の本田へ浮き球でパス。本田が胸でトラップしたボールを香川へと送り、ゴールに繋げた。後半38分にはPKのキッカーを務め、余裕を見せ落ち着いてパネンカで決め、自身のラストゲームで得点も記録した。
 
 後半途中、足を負傷したものの結局、右足を引きずりながらフルタイムをプレーし、サッカーで繋がりのできた僚友、全員との最後の時間を心ゆくまで楽しんだ。

 柏木は現在、引退後も家族とともに岐阜に在住している。移籍するまでは縁もゆかりもなかったが、繋がりのできた岐阜を「導かれてきた土地」と言い、自分とフィーリングが合ったところだとも話す。

 岐阜のクラブアンバサダーを務め、様々な活動をしている。ホームゲームで観戦する姿が常にあり、チームのメンバーともコミュニケーションをよく取っている。また、クラブ外でも、岐阜の観光名物であり、1300年の歴史を持つ「長良川鵜飼」の船頭を務め、岐阜という街自体の広報にも一役買っている。
 

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