伝統の40番を継承。リーグタイトルまであと1つ。常勝軍団復活への道。先導するのは鈴木優磨だ【鹿島】

2025年12月01日 元川悦子

最後に国内で頂点に立ったのは2016年

レジェンド小笠原から40番を継承した鈴木。鹿島の精神的支柱だ。(C)SOCCER DIGEST

 ラスト2節の段階で、鹿島アントラーズと柏レイソルの一騎打ちとなった2025年のJ1優勝争い。

 11月30日の第37節で、勝点70で首位の鹿島が東京ヴェルディ、同69で2位の柏はアルビレックス新潟とそれぞれアウェーで対戦。柏はエース細谷真大がハットトリックを達成し、内容的にも圧倒した状態で3-1の快勝を収めたが、鹿島は東京Vに大苦戦。途中出場のジョーカー松村優太のゴールで辛くも1-0で勝利。勝点1差で首位をキープした。

「だいぶ苦しかったですけどね」

 試合後にこう感想を漏らしたのは、鈴木優磨だ。この日はチャヴリッチと小池龍太がベンチ外となったため、背番号40が陣取ったのは右MF。左MFに入ることはしばしばあったが、右は皆無に近い。「今日はいろいろチーム事情的に慣れないポジションでやりました」と本人も語っていた。

 その鹿島の看板アタッカーを相手も徹底警戒。左CBの谷口栄斗と左ウイングバックの深澤大輝が2枚がかりでマークしてきたため、鈴木は思うようにボールを受けられない状況が続く。

 鬼木達監督は川崎フロンターレの家長昭博のようなフリーマン的な動きを期待しつつ、ゴールに関与してほしいと考えていたのかもしれないが、結果的に鈴木のシュートはゼロ。チームとしても守勢に回る時間が長く、内容の改善が必須と言える戦いぶりだった。
 
「試合後にオニさんから『もっと入りから自分たちらしさを見せていかないとダメ』っていう話があったけど、本当にその通り。一人ひとりの距離感がすごく遠かったんで、そこは考えないと。ヒリヒリしたゲームが続きますけど、もっともっとチャンスの数を増やしていかないと、得点の確率は上がっていかない。質の部分と立ち位置だったりをもう1回、見つめ直してやっていく必要があると思います」と、鈴木も神妙な面持ちで話していた。

 絶対的エースである彼が得点に直結するプレーを出せない状況だと、J1残留を決めて調子を上げている最終節の相手・横浜F・マリノスを撃破するのは難しくなる。鹿島のレジェンド小笠原満男から背番号40を継承している以上、鈴木には鹿島を9年ぶりのリーグタイトル奪還へと導く責務がある。それを果たせない限り、偉大な先輩に肩を並べ、超えていくことはできないのだ。

 鹿島が最後に国内で頂点に立ったのは2016年。タイトルという意味では、2018年のアジア・チャンピオンズリーグが最後だ。同年末に小笠原が引退。彼がピッチを去った後、長く無冠状態が続いている。

 2010年代の優勝を経験しているのは、現主力では鈴木、植田直通、三竿健斗の3人だけ。植田も「若い頃は先輩たちについていくだけだった」と述懐する。そこから長い月日が経過し、鬼木監督のもと、ようやく常勝軍団復活にあと一歩のところまで迫った。

 2017年シーズンの最終節にジュビロ磐田と引き分け、連覇を逃した経験もあるだけに、今回のチャンスを逃すわけにはいかない。それはアカデミー育ちの鈴木が誰よりもよく理解しているはずだ。
 

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