安藤駿介、車屋紳太郎、チョン・ソンリョン、ジェジエウとの涙の別れ...川崎らしい心温まるホーム最終戦も、看過できない修正できぬままの課題

2025年12月01日 本田健介(サッカーダイジェスト)

印象的だった佐々木らの言葉

セレモニーも行なわれた川崎のホーム最終戦。一方で課題も残った。(C)J.LEAGUE

[J1第37節]川崎 1-2 広島/11月30日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

 川崎にとっては2025年のホーム最終戦。試合後には今季限りで引退するGK安藤駿介、DF車屋紳太郎、今季限りで退団するGKチョン・ソンリョン、DFジェジエウへ向けた川崎ならではの内容の濃いセレモニーも行なわれ、多くの温かい涙に包まれた。

 チームを離れる4人が何より強調したのはこれまでの感謝と川崎への愛情であり、それだけ慕われるチームだということは改めて誇りにすべきなのだろう。彼らのプレーをもっと見たかったという想いとともに、こうしてしっかり別れの場を設けるクラブの伝統は非常に良いものだと再認識させられた瞬間でもあった。

 もっとも、水を差すなとお叱りを受けそうだが、しっかり試合内容も振り返らないといけない。広島との一戦は前半に先制をしながら1-2の逆転負け。この日も前半終了間際と後半開始早々という失点の時間が悪く、同点に追いつかれたのも、何度も修正の必要性を共有してきたクロスからの形。「集中力高く守れていたし、得点も取れたし、いい流れでした」と1-0までの展開を評価しつつ、長谷部茂利監督も振り返る。

「前半の終盤で失点してしまったことも含めて、時間帯のところ、またクロスから失点をしてしまったところの課題が両方重なったと思います。後半も同じように立ち上がりに課題と向き合うことになった。立ち上がりの失点はこれまでもしていますし、今日も繰り返してしまった。本当に残念というか、なかなか改善できない状況でここまで来てしまったなと。

 得点は取れるという自分たちの長所は活かしつつ、1点ではやっぱりなかなか勝てない、そういう状況になったなと思います。今シーズンを振り返ると、逆転負けをした、こういう試合で何度か負けたり引き分けたりということがあり、象徴するようなゲームになってしまったなという思いです。残念な気持ちです」

 チームを去る車屋、ジェジエウをCBで組ませ、チョン・ソンリョンと安藤のふたりのGKをベンチに置き、81分には山口とチョン・ソンリョンの珍しきGK同士の交代も選択。指揮官は「試合に勝つために、勝ちたいメンバー、可能性を高める選手を私は選びます。それはプレーもそうですし、メンタル的に選手同士にいい影響(を与えられるように)。ソンリョンが出たら沸きましたね。空気が変わりました」と語り、チームを離れる選手たちのためにと士気を高めたが、"特別編成"でもあっただけに、この試合自体の評価は難しいとも言えるのだろう。
 ただ、ゴールを決めるのが"当たり前の姿"になり、この日もネットを揺らした伊藤達哉も指摘する。

「勝ちたい試合であまり結果を出せないシーズンだとずっと思っています。今日もホーム最終戦で、レジェンドの選手たちの最後の試合で勝って送り出したい気持ちが強かったですが、そういう試合で勝てないのが今の自分たちの実力だと思います。

 チーム全体でリーダーシップを取るべき選手が常にチームをまとめると言いますか、みんなが同じ方向を向いてやっていけるようにするのはもちろんですが、個人的には自分はアタッカーなので、自分が2点目、3点目を決めていければそれが一番良い。自分としてはそこかなと感じます」

 またキャプテンの脇坂泰斗は自らのゴールへの関わり方をポジティブに捉えながら、チームの戦い方についても話した。

「先制点を取れたのは大きかったですが、またクロス対応でやられてしまった。個人的にその前に35分くらいからですかね、リードしていましたが、間延びしているなと感じていて、このまま1-0で(前半が)終わるように、ゴールキックを無理につながないで、フィードして(自分たちの)ディフェンスラインを高く保っても良いと考えていました。

 ポゼッションをして(CFの)エリソンに蹴ってセカンドボールを拾えないと間延びしてしまう。それだったら最初からフィードにしてコンパクトに保ったうえでセカンドボールの拾い合いに持っていったほうが、良いのかなと思いながら、そこをチームとして合わせられなかったのは、キャプテンとして責任を感じますし、そういうところが今季、勝点をもうひとつ積み重ねられないところだと思います。

 前半の終盤に追いつかれるゲームが何回もある。自分たちは点を取れますけど、1-0で折り返すのか、1-1で折り返すかでは全然違う。そういったところはクロス対応も含めて今シーズンの課題がモロに出たかなと。2失点目も相手のゴールキックを下でつながれて簡単にあそこまで運ばれている。もう準備ですよね。そこで目を切っていた選手もたくさんいたと思うし、そういった細かいところを詰めていかないといけない。

 意識で変わる部分は間違いなくある。練習してコツコツ積み上げていく変化もありますが、例えば切り替えのところだったり、今日の2失点目の前からハメていく準備も意識や頭の切り替えで改善できる。そういうところはチームとして提示はされている分、個人の意識で持っていかないといけない。一人ひとりがやっていかないといけないと思います。

 やっぱり緩さが出てしまう。やる時やるというのをなくし、常にみんなで守備も攻撃もできないと現代の戦術的なサッカーでは難しくなる。より強い個に対応するためにも、組織は大事になる。一人ひとりの意識で変わるところはある。クロス対応などは試合を通じて見れば良くなっていると思います。ただ結果を出さないといけない。守備のことばっかりになっていますが、攻撃の時間を増やすという面でも守備をやる必要があるので、両方やっていきたいです」

 脇坂が語るように状況に合わせたチームとしての臨機応変な振る舞い方も今季の課題であり、今後、チームの顔になるべき佐々木旭も意識の部分を口にする。

「みんなリーダーシップを取っていないわけではないですし、みんなチームのために戦っています。ただ、やっぱり全員がもっと"俺がこのチームを勝たせるんだ"という想いを高める必要があるようにも感じます。今日は広島さんのほうが想いが勝っていたような気もします。

(準優勝した)ACL(エリート)は組織的に戦えましたが、シーズンを通じてすべてがそう上手くいくわけではない。その時に個々が強い想いを持ってやらないと、チームとして上手く回っていかない。それこそ人任せにするのではなく、自分が何とかしようと戦わないと勝星を積み上げていけません。みんな頑張っていますが、少しでも弱気な気持ちが出てしまうと周囲に伝染してしまう。

 個人的な意見としては対戦していて今季は鹿島さんや神戸さんはそういう"自分がなんとかするんだ"という強い想いを持った選手が多かった印象でした。そこはフロンターレはもっとやっていけると思います。(多くの功労者が去る来季に向けては)先輩たちがいなくなるのは寂しいですが、逆にチャンスだとも考えています。新しい選手が成長できるチャンス。ベテラン、若手関係なく"誰かがじゃない。俺がやってやる"という選手が多く出てくれば。その意識で日々の練習に臨みたいです」

 チームの指針となり、背中や言葉でチームを引っ張ってきた4人の男たちが去り、チームは改めて新たな時代へと入っていく。

 活躍したタレントたちの海外移籍も続き、今季は夏にFW山田新、CB高井幸大も欧州挑戦を決断した。バトンをつなぐ面では、かなり難しいフェーズに入ってきたクラブにおいて、再び覇権争いに加われるチーム力を手にできるのか。得点力の維持&向上と、失点の削減を目標にした今季は、昨季(8位)の66得点・57失点に対し、残り1試合を残した時点での成績(7位)は67得点・53失点。改めて今季の課題を真摯に受け止め、個々が意識の向上とレベルアップを図れるか。そこが来季への大きなポイントになりそうだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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