一発レッドで痛恨の退場。長南開史の無念さ、仲間への感謝、そして決心「モチベーションを落とさず、最善の準備をしたい」【現地発】

2025年11月12日 松尾祐希

乗り越えた先には新たな景色が見えるはず

ポルトガル戦で一発退場の長南(7番)。チームは2-1で勝利。「本当に助けられた」と感謝の言葉を口にする。写真:松尾祐希

 悔やんでも悔やみ切れない。16歳の若者にとって、今までに味わった経験がない試練だろう。だが、逆に言えば、サッカー選手として、人間として強くなるチャンスを得たのかもしれない。

 現地11月9日に行なわれたU-17ワールドカップのグループステージ最終節。日本はポルトガルを2-1で下し、首位でノックアウトステージ進出を決めた。

 歓喜に沸く日本の選手たちのなかで、安堵の表情を浮かべた選手がいる。MF長南開史(柏)だ。すでに所属クラブではプロ契約を結んでいるチーム最年少のサイドアタッカーだが、このポルトガル戦で窮地に陥った。

 3-4-2-1の右ウイングバックで今大会2度目の先発を果たし、前半は積極的な仕掛けでチャンスに絡んだ。35分に生まれたMF和田武士(浦和ユース)のゴールシーンでも起点になるなど、目を引くパフォーマンスを披露した。後半も攻守にタスクを遂行。しかし、2-0で迎えた71分にまさかの事態が起こる。

 長南がMFステバン・マヌエルに強めのショルダータックルを浴びると、倒されたタイミングで長南の右足裏が相手にあたってしまう。長南にイエローカードが出されたが、ポルトガルのベンチは即座にFVS(リクエスト方式のビデオ判定)を要求。主審がモニターでチェックした結果、判定が覆ってレッドカードとなった。

 長南がピッチを去り、日本は10人で戦うことに。以降は守勢に回り、80分に失点。1点差に詰め寄られ、その後も自陣で耐える展開となる。それでもなんとか最小失点に留め、勝利を掴んだ。
 
 10日は今大会を通じて初のオフとなり、チームは翌日にノックアウトステージに向けて練習を再開。グラウンドで汗を流す長南の姿があった。現時点で出場停止は何試合になるか分からない。FIFA(国際サッカー連盟)の懲戒規定で「乱暴な行為」は最低3試合の出場停止と定められており、「選手等に対する肘打ち、パンチ、蹴り、噛みつき、唾を吐きかける又は殴打する」についても、最低3試合もしくは適当な期間の出場停止になると明記されている。

 今後の見通しが立っていない状況下で、完全に気持ちを切り替えられたわけではない。21名しかいないメンバーで、1人欠けるのは厳しい。記者陣の前に姿を現わした長南の表情は暗かったが、チームメイトをサポートするべく、気丈に振る舞う

「みんな、自分がいなくなって10人になっても...走ってくれて。やっぱり、そこでも本当にチームに助けられたなって思う。(出場停止が)まだ何試合かは分からないですけど、次に自分が出られるようになるまで、チームを信じて、チームのために動けることをしたい」

 トレーニング前には廣山望監督と5分ほどふたりで話す場面もあり、メンタル面について言葉を交わした。「廣山さんには、『まだまだそういうとこも足りないし、やっぱり経験だから』と言われました」。

 起きてしまったことは仕方がないが、しっかり反省をして、貴重な経験として次につながるしかない。仲間たちからも励まされた。だからこそ、今の自分にできることをやるだけ。チームを下支えし、もう一度ピッチに立つチャンスが巡ってきた時に最高のプレーで恩を返すことだ。

「モチベーションを落とさず、そこまで最善の準備をしていきたい」

 今は苦しいかもしれないが、乗り越えた先には新たな景色が見えてくるはず。そう信じ、長南は想いを仲間に託して、その時を待つ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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