「とても幸せだ。引き続きベストを尽くす」
日本戦で2失点に直接関与したファブリシオ・ブルーノ。(C)Getty Images
セレソンが日本代表に大逆転負けを喫した10月14日の試合後の会見で、一人のブラジル人記者がカルロ・アンチェロッティ監督に憤然とした口調で尋ねた。
「今日の試合で大きなミスを犯した選手は、今後、招集することはない?」
これは、自軍ゴール前で南野巧実に誤ってボールを渡す痛恨の失策を犯し、さらに中村敬斗のシュートをクリアしそこねて同点ゴールを献上するなど、2失点に直接関与したCBブルーノ・ファブリシオ(クルゼイロ)を指しているのは明らかだった。
アンチェロッティの答は、次のようなものだった。
「ミスをしたからといって、チームから除外することはない」
これを聞いたブラジルメディアの大半は、「あくまでも建て前。今後、F・ブルーノがセレソンに招集されることは絶対にない」と考えたはずだ。
ところが、11月3日、このイタリア人監督は大方の予想を裏切り、11月の強化試合(15日/セネガル戦、18日/チュニジア戦)にF・ブルーノを再び招集した。「非常に優れた選手」、「ミスは選手が成長する糧となりうる」という説明と共に。
ブラジルのメディアとファンは、驚愕した。この国では、セレソンで大きなミスを犯した選手は徹底的に糾弾され、セカンド・チャンスを与えられることはまずないからだ。
当のF・ブルーノは、その2日後のブラジル全国リーグの試合で右CKを高い打点のヘディングで叩き込み、チームに勝利をもたらした。試合後、セレソンに招集されたことについて聞かれると、
「とても幸せだ。引き続き、チームでもセレソンでもベストを尽くす」
と満面の笑顔を浮かべ、そう答えていた。
「今日の試合で大きなミスを犯した選手は、今後、招集することはない?」
これは、自軍ゴール前で南野巧実に誤ってボールを渡す痛恨の失策を犯し、さらに中村敬斗のシュートをクリアしそこねて同点ゴールを献上するなど、2失点に直接関与したCBブルーノ・ファブリシオ(クルゼイロ)を指しているのは明らかだった。
アンチェロッティの答は、次のようなものだった。
「ミスをしたからといって、チームから除外することはない」
これを聞いたブラジルメディアの大半は、「あくまでも建て前。今後、F・ブルーノがセレソンに招集されることは絶対にない」と考えたはずだ。
ところが、11月3日、このイタリア人監督は大方の予想を裏切り、11月の強化試合(15日/セネガル戦、18日/チュニジア戦)にF・ブルーノを再び招集した。「非常に優れた選手」、「ミスは選手が成長する糧となりうる」という説明と共に。
ブラジルのメディアとファンは、驚愕した。この国では、セレソンで大きなミスを犯した選手は徹底的に糾弾され、セカンド・チャンスを与えられることはまずないからだ。
当のF・ブルーノは、その2日後のブラジル全国リーグの試合で右CKを高い打点のヘディングで叩き込み、チームに勝利をもたらした。試合後、セレソンに招集されたことについて聞かれると、
「とても幸せだ。引き続き、チームでもセレソンでもベストを尽くす」
と満面の笑顔を浮かべ、そう答えていた。
彼は高さと強さに加え、CBとしては特筆すべきスピードの持ち主だ。今年1月末には元ブラジル代表のCFフッキ(アトレチコ・ミネイロ)を完璧に封じ、「フッキをポケットにしまい込んだ」とも称賛されている。
セレソンのCBで来年のW杯のメンバー入り当確と呼べるのが、マルキーニョス(パリSG)、ガブリエウ・マガリャンイス(アーセナル)、エデル・ミリトン(レアル・マドリー)の3人。F・ブルーノは、ルーカス・ベラウド(パリSG)、アレッシャンドロ(リール)らと共に「4番手」の座を争っている。
いわば当落線上の立場にあり、日本戦後、涙を流しながらミスを詫びた選手に対して、アンチェロッティは特大の"男気 "を見せたというわけだ。
ただし、アンチェロッティは優しいだけの人物ではもちろんない。アスリートらしからぬ生活を送り、近年、故障が絶えないネイマールについては「どれほど優れた選手であろうと、コンディションが100㌫でなければ招集しない。80㌫ではダメだ」と明言して招集を見送り続けている。
優しさと厳格さのバランス、選手を評価する基準と信念――。アンチェロッティは、ブラジルのフットボールに新たな風を送り込んでいる。
文●沢田啓明
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。
【画像】国内でガーナ&ボリビアと対戦!年内最後の親善試合に挑む日本代表招集メンバーを一挙紹介!
【画像】コンセプトは『水平線』! 北中米W杯でも着用する日本代表の新ユニホームを特集!
【画像】日本は何位? 最新FIFAランキングTOP20か国を一挙紹介!2位と3位が変動、トップ10に返り咲いた強豪国は?
セレソンのCBで来年のW杯のメンバー入り当確と呼べるのが、マルキーニョス(パリSG)、ガブリエウ・マガリャンイス(アーセナル)、エデル・ミリトン(レアル・マドリー)の3人。F・ブルーノは、ルーカス・ベラウド(パリSG)、アレッシャンドロ(リール)らと共に「4番手」の座を争っている。
いわば当落線上の立場にあり、日本戦後、涙を流しながらミスを詫びた選手に対して、アンチェロッティは特大の"男気 "を見せたというわけだ。
ただし、アンチェロッティは優しいだけの人物ではもちろんない。アスリートらしからぬ生活を送り、近年、故障が絶えないネイマールについては「どれほど優れた選手であろうと、コンディションが100㌫でなければ招集しない。80㌫ではダメだ」と明言して招集を見送り続けている。
優しさと厳格さのバランス、選手を評価する基準と信念――。アンチェロッティは、ブラジルのフットボールに新たな風を送り込んでいる。
文●沢田啓明
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。
【画像】国内でガーナ&ボリビアと対戦!年内最後の親善試合に挑む日本代表招集メンバーを一挙紹介!
【画像】コンセプトは『水平線』! 北中米W杯でも着用する日本代表の新ユニホームを特集!
【画像】日本は何位? 最新FIFAランキングTOP20か国を一挙紹介!2位と3位が変動、トップ10に返り咲いた強豪国は?