10代でバルサに加入→すぐ放出されたブラジル人FWが母国で覚醒中。シーズン途中のビッグクラブ入団はあまりに高いハードルだった【コラム】

2025年10月26日 小宮良之

救世主的役割を期待されていた

バルサでは本領を発揮できなかったヴィトール・ロッキ。(C)Getty Images

 若い才能を最大限に生かせるか?
 
 プロの世界、それは簡単なことではない。
 
 トップリーグでデビューし、活躍するにはタイミングが肝心で、時機を誤るとうまくいかない。高給クラブだったらいいわけでもなく、身の丈に合わないチームでは失意に暮れるだろう。最悪の場合、選手は自信を失い、才能も儚く消える。若く実戦経験が乏しい場合、不振からリカバリーして成長するための拠り所もないからだ。

 その点、ブラジル代表FWヴィトール・ロッキは、ようやく自分に合ったチームで実力を見せつつある。ブラジル、パルメイラスに移籍後、得点を量産している。リベルタドーレス杯準決勝リバープレート戦では2試合ともゴールを決め、決勝進出の立役者になった。20歳の新鋭FWは、ブラジル国内で屈指のストライカーの存在に返り咲いた。

 しかし過去2シーズン、10代のロッキは欧州で苦しんでいる。2023-24シーズン途中、3000万ユーロという移籍金でFCバルセロナに入団。当時、シャビ・エルナンデス監督が率いたバルサで救世主と期待されたが、数試合出場しただけで見切りをつけられてしまった。
 
 バルサが大きく様変わりする中、中堅のベティスにレンタル移籍したが、そこでもポジションをつかみきれていない。スペイン国王杯を含めると7得点は悪くなかった。しかし高給には見合わず、「戦力外」の烙印を押されることに。結局、移籍金2550万ユーロでパルメイラスに売り渡された。2年足らずで価格=市場価値は減ってしまったのだ。

 ロッキは10代で、不安定だったバルサにシーズン半ばにやってきた。それだけで大きなハンデだった。ブラジルからヨーロッパに渡るとき、ラ・リーガはスペイン語で(ポルトガル・ブラジル語と似ている)どうにか適応できるが、プレーリズムは大きく違い、引き出しが豊富ではない若い選手には厳しい。しかもシーズン途中のビッグクラブで救世主的役割を期待されていた。成功を収めるのは無理があった。

 10代で海を越えて、違う大陸で活躍することはロマンだろう。もちろん、それで活躍できる若手もいる。しかしシーズン途中のビッグクラブで、まるで違うプレーリズムに適応しつつ、大きな期待を背負って成功するのは、あまりに高いハードルだった。

 選手が海を越えるべきタイミングはあるだろう。自国で2、3シーズン、継続的な活躍を続けることで基盤は作り上がる。その後で海外挑戦した方が、過去の例を見ても成功確率は高い。10代の才能は定着したものではないだけに、まずは実力を自分のものにすることが重要だろう。タイミングを間違えてはならない。

文●小宮良之

【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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