ルヴァン杯決勝へ川崎を支える守備意識。象徴的だったFWエリソンの言葉や11戦11ゴールの伊藤達哉らの献身性と高い個の力

2025年10月09日 本田健介(サッカーダイジェスト)

準決勝第1戦を3-1で制す

前線で身体を張ったエリソン。守備意識も高かった。写真:鈴木颯太朗

[ルヴァンカップ・準決勝・第1戦]川崎 3-1 柏/10月8日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

 ルヴァンカップの決勝進出を懸けて対戦した川崎と柏。10日前にリーグ戦でも対戦していた両者はそこで4-4の打ち合いを演じていた。

 そのなかで、3-4-2-1でこれでもかというほど主体的にボールをつないでくる柏に対し、4-2-3-1の川崎が目を向けたのは4失点したことで、特に前半はボランチの山本悠樹が「狙いどころも難しく、自由にやらせすぎた」とテンポよくパスをつながれ、崩された展開でもあった。

 ルヴァンカップではその修正をテーマにした川崎は、リターンマッチとなったホームでの準決勝第1戦は、押し込まれた後半に1失点したことは課題だが、3-1と2点のリードを得て、アウェーでの第2戦に臨めることになった。

 何より光ったのは守備意識の高さだ。

「(3-4-2-1の柏の)2シャドーを(川崎の)ダブルボランチがマンマーク気味に抑えてきたこともあり、その間にCF垣田(裕暉)がクサビのボールを受けられる展開もあったと思います。ただその状況を活かしきれていたかというと必ずしもそうではなかったと思います」

 柏のリカルド・ロドリゲス監督が振り返ったように前半はリーグ戦の課題を修正した川崎が"良い守備からの良い攻撃"を実践し、2-0で折り返すことに成功している。

 一方で後半はリカルド・ロドリゲス監督が状況の打開へ、ボランチに戸嶋祥郎、右ウイングバックに山之内佑成らを投入。

「前半、左サイドは上手く機能していたと思います。一方で右サイドはなかなか上手く機能せず、奥行きも幅もなかなか取れなかったなかで、ハーフタイムの交代になりました。また、(ボランチの)ノブ(中川敦瑛)が累積警告による出場停止で不在でした。彼のクリエイティブなプレーも押し込んだ際には、チームにプラスアルファを提供してくれていたので、その不足分をサチ(戸嶋)を起用し、(もうひとりのボランチの山田)雄士をひとつ前で起用することによって、後半よりクリエイティブなプレーを雄士がチームに提供してくれていたと思います」

 そうリカルド・ロドリゲス監督が語ったように後半に形を変化させた柏に対し、川崎は押し込まれる時間が続いたが、CFエリソン、サイドハーフの伊藤達哉、マルシーニョも低い位置まで下りて、スペースを埋める。高い守備意識と、ここぞでの個の力で、終盤には3点目を奪い、2点のリードを得てアウェーでの第2戦に臨むことになった。

 
 本来はより攻撃に力を割きたいであろうエリソンの言葉も象徴的であった。

「チームとして素晴らしい勝利を勝ち取ることができました。良いゲームができたと思います。柏さんは本当に能力の素晴らしいチームだと思っています。しかし、自分たちはやるべきことをやって勝利を掴むことができました。終わったのでまずはゆっくり休んで、このゲームのいくつかの修正点を改善していきたいです。

 柏さんとのこの間のゲームは自分は(累積で)出場できませんでしたが、技術面はかなり高いものがあるという印象でした。彼らの特長を消すためにも、しっかり締めてプレスをかけなくてはいけないと考えていました。しっかりこのゲームは相手の長所を消すことができたんじゃないかなと思います。自分たちがしっかり締めて、相手の技術面の高いところを遮ってしまえば、彼らは攻撃をできないかなと思います。

 ただそれは簡単なことではなく、すごく難しい守備の対応になっていました。本当にマークを激しくしたので疲労感は強く感じています。それでも、ポジティブな結果になって良かったです。ただ何も勝ち得ていない。もう1試合結果をしっかり勝ち取りたいです。今日のゲームを100パーセントと表現すなら、次のゲームは200パーセントで挑んでいかないといけないと思います」

 誰もが手を抜かずに守備ブロックを敷き、ボールを奪えば、配球力に長けたボランチの山本、CB佐々木旭らが長いボールを前線に送り、個人技に秀でたエリソン、マルシーニョ、伊藤らが、相手の守備陣形が整わないうちにフィニッシュに持ち込む。もしくは、相手の後方のビルドアップを狙い、ショートカウンターで仕留める。

 まさに理にかなった戦い方であり、やり方を徹底しているからこそ選手たちはプレーしやすいのだろう。11戦で11ゴールと絶好調の伊藤は、落ち着き払ったパフォーマンスと、抜群のシュートセンスが素晴らしいが、チームの整理された戦術において、自身の良さを出しやすい環境が活躍の背景にあるように映る。

 エリソン、マルシーニョにはこの日、ゴールは生まれなかったが、あと一歩のチャンスも作った。

 一方でCBの佐々木は指摘もする。

「結果的には良いスコアで終われましたが、内容はずっと押し込まれていましたし、後半は自分たちのやりたいことはできていなかったので、(準決勝第2戦では)相手のホームは良い雰囲気ですし、このままだと圧倒されてしまうと思うので、自分たちのやるこべきこと、やりたいことを改めて整理して2戦目に挑む必要があるのかなと思います。

 耐える時をしっかり耐えられるようにしながら、自分たちがしっかりボール握る技術だったり、判断を高めないといけないと感じます。もう少し一人ひとりが勇気を持って、ボールを欲しがるところなどは強い気持ちを持ってやっていきたいです」

 柏対策を施した第1戦での戦い方に、川崎が元来誇っていた、相手を走らせるパスワークが合わされば、さらに良い試合の運びをできるだろうが、リードを持って臨む第2戦はどうなるか。内容が楽しみだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)



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