記者席のあちらこちらにマテ茶セット。地元ファンのほとんどはアルゼンチンにブーイング。さて、ラウンド16で因縁の相手にリベンジなるか【U-20W杯戦記】

2025年10月07日 浅田真樹

対戦相手がどこであろうと、事実上のアウェーゲームに

記者席に置かれたアルゼンチン国旗柄のマテ茶カップ。お湯の入ったポットにはマラドーナやメッシのステッカーが貼られたものをよく見かける。写真:浅田真樹

 マテ茶は南米、特にアルゼンチンでポピュラーな飲み物だ。

 サッカー中継などを見ていても、スタジアム入りするアルゼンチン人選手が専用のストロー付きカップを手に、マテ茶を飲みながらバスから降りて来るのを見かけるほどである。

 試合会場の記者席も例外ではない。

 U-20ワールドカップのグループリーグ、アルゼンチン対イタリアの試合に足を運ぶと、記者席のあちらこちらにマテ茶セット(お湯の入ったポット、茶葉入りの袋、カップ)が置かれ、"お茶会"が開かれていた。アルゼンチン戦以外では、ほとんど見られなかった光景である。

 そんなお茶会が、今大会でとりわけ賑やかに感じられるのは、アルゼンチンが好調であることもひとつの要因かもしれない。

 マテ茶を手にしたアルゼンチン人記者のひとりは、「今回は、2年前のチームよりも強い」と期待を込め、「このチームは、特にディフェンスが良い」と評する。

 2年前のこの大会を振り返れば、アルゼンチンは自国開催にもかかわらず、ラウンド16でナイジェリアに0-2と敗れて、あっさり終戦。評価が低いのも無理はないが、それにしても今回のチームへの期待の高さがうかがえる。

 事実、アルゼンチンはグループリーグ3連勝と、優勝候補と呼ぶにふさわしい戦いを見せている。2連勝で迎えたイタリアとの"首位通過決定戦"でも、終始優勢に試合を運んだアルゼンチンは74分に先制すると、そのまま1-0で押し切った。

 しかも、値千金の1点を叩き出したのは、U-20アルゼンチン代表を率いるディエゴ・プラセンテ監督曰く、「攻撃力を高めるために入れた」という途中出場の右サイドバック、ディラン・ゴロシートである。軽やかなドリブル突破から決めたゴールは、チームに勝利をもたらしたばかりでなく、選手層の厚さをも見せつける結果となった。
 
「私たちが望んでいたのは、1位になること。サンティアゴ行きのゾーンを勝ち取ることだった」。試合後、そう語ったのはプラセンテ監督である。

 アルゼンチンは2連勝の段階で決勝トーナメント進出を決めており、いわばイタリア戦は消化試合。しかしながら、1位通過なら決勝までのすべての試合をサンティアゴで戦えるが、2位通過なら移動がともなう。優勝を狙うアルゼンチンは、そのために欲しかった勝利を確実に手に入れたというわけだ。

 とはいえ、ライバル意識が強い南米にあっては、アルゼンチンはこの先、対戦相手がどこであろうと、事実上のアウェーゲームを強いられることが予想される。

 イタリア戦でも、スタンドを埋めた地元ファンのほとんどが、アルゼンチンにブーイングを浴びせていたが、より大きなスタジアムで行なわれるサンティアゴでの試合となれば、さらにアウェー感は強まるだろう。

 それでもプラセンテ監督は、「すべてが思い通りに進んでいる時は、モチベーションが上がらないもの」と穏やかな表情で語り、こう続ける。

「サッカーで重要なのは、何かに反応することではなく、ありのままのプレーで勝利だけに集中することだ」

 次戦、ラウンド16でアルゼンチンとの対戦が決まったのは、くしくもナイジェリア。アルゼンチンがモチベーションを高めるには、これ以上ない相手である。

取材・文●浅田真樹(スポーツライター)

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