バルサやマドリーも…指揮官が交代しても“不動”のポスト【コラム】

2025年10月01日 小宮良之

「GKをわかるのはGKだけ」

マドリーのGKコーチを務める。(C)Getty Images

 欧州や南米では、監督を中心にコーチングスタッフはチームを組み、運命共同体として精を出す。その監督がクラブにクビを言い渡された時は、一蓮托生である。監督麾下のコーチングスタッフも、一斉に職を失う。代わりの監督が新たなコーチングスタッフを連れて、"チーム"を組む形だ。

 しかし、その人事改編でも、あまり影響を受けないコーチのポストが一つだけある。

 それはゴールキーパーコーチだ。
 
例えば今シーズン、FCバルセロナを新たに率いたドイツ人指揮官ハンジ・フリックは、新しいコーチングスタッフを連れてきたが、GKコーチだけは据え置きだった。2012-13シーズンから同じホセ・ラモン・デ・ラ・フエンテで、10年以上もバルサのGKコーチを続けてきた。多くの監督が入れ替わったが、不動のポストを守っている。

 また、レアル・マドリーもカルロ・アンチェロッティ監督がブラジル代表監督に就任することになって、多くのコーチングスタッフが離れ、シャビ・アロンソ監督がレバークーゼンから連れてくるスタッフと入れ替わることになった。しかし、GKコーチだけはルイス・ジョピスが留任する予定になっている(2021-22シーズンから続ける)。
 
「GKをわかるのはGKだけ。GKのことは、GKコーチに任せている」
 
 監督の中でも、このスタンスの人は少なくない。GKは特殊なポジションであるだけに、GKコーチも職人的、専門的で「独立している」と言える。GKは聖域のようなところがあるのだ。

 そうした独自の世界だけに、GKコーチの仕事は大きくものを言う。GKコーチの力量が低いチームは、優秀なGKを輩出できない。

 例えば、ラ・リーガの名門であるアスレティック・ビルバオは昔からGK王国で、ここ数年も、下部組織からトップに上がったケパ・アリサバラガ、ウナイ・シモン、アレックス・レミーロと3人も次々とスペイン代表に送り込んでいる。ジュレン・アギレサバラも次世代の有力GKである。アイトール・イルというGKコーチは2008-09シーズンにアスレティックのCチームから指導し、Bチーム、トップと20年近く、GKの指導に携わっている。

 良いGKが出るチームは、相応の理由があるのだ。

 Jリーグでも、優れたGKを輩出しているチームは優れたGKコーチがいるし、その逆もしかりである。

 独立した立場が許される理由は、GKコーチが監督の座を脅かすこともほとんどないこともあるだろう。

文●小宮良之

【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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