久保建英からのメッセージを胸に。189センチのレフティCBが、スペインで得た経験をU-20W杯の舞台で示す【現地発】

2025年09月30日 松尾祐希

正確なフィードと空中戦の強さで存在感

世界の大舞台でも強いハートで戦う喜多。写真:松尾祐希

 189センチで左利き。喜多壱也のポテンシャルが花開きつつある。

 現地9月27日にチリで幕を開けたU-20ワールドカップ。大会のオープニングマッチに登場した船越優蔵監督が率いる若き日本代表は、エジプトに2-0で勝利した。

 先制点となるPKを決めたCB市原吏音(大宮)が攻守で活躍した一方で、4バックの左CBに入った喜多(レアル・ソシエダ)も相棒に負けずとも劣らないパフォーマンスを披露。正確な左足のフィードと空中戦の強さで確かな存在感を放った。

 京都のアカデミー育ちで24年にトップ昇格を果たした喜多は、今夏に慣れ親しんだクラブを離れ、単身渡欧。レアル・ソシエダに期限付き移籍し、現在はBチームで研鑽を積む。

 プロ2年目に下した大きな決断。「2月のU-20アジアカップが終わったくらいに、代理人から『気になっているらしいよ』と言われたんです。でも、あんまり信じてなくて。『ほんまの話やったらすぐ行きます』って」と、当初はそんなスタンスだった。そして、夏前に正式オファーが届いた時には、いろんな感情が芽生えた。

「本当に話が来たら、すごく迷ったんです。あまりにも早いなって思ったし、京都で試合に出ていないのに、行くのは逃げた感じになるので嫌だった」

 昨季に続き、今季のリーグ戦で出場機会はゼロ。優勝争いを繰り広げるチームで出番に恵まれず、悔しい想いを味わってきた。お世話になったクラブで何も成し遂げられていない。二の足を踏んだが、最終的には先輩や両親の後押しもあり、スペイン行きを決断した。
 
 ソシエダのBチームに合流すると、マラガなど1部での経験もあるクラブがいるスペイン2部で、ここまで4試合に出場。京都の曺貴裁監督から一番学んだことである「失敗を恐れず、チャレンジする心」をモットーに、CBとして異国の地で奮闘。自分は通用しているのか。正直に言えば「やれているかどうか分からない」という。

「余裕もないし、チームも勝てていない。厳しいリーグと思ってきたんですけど、本当に凄い舞台だなって思いました」

 それでも、日本で味わえないパワフルな選手との対峙は、自分の経験として蓄積された。特に馬力があるアタッカー陣との"バトル"は、貴重な場になっていると話す。

「ウインガーだけではなく、一人で剥がす力はサイドバックとかボランチも持っている。前が空いていたら行くし、ハマっていたら前に行って打開するし。アジアではなかなかおらん選手ばかり」

 一方で、空中戦の強さは十分に通用しているという自負もある。それは今回のU-20ワールドカップでも活きている。エジプト戦でもスペインで得た手応えを再認識するシーンがあったようだ。

 次の相手は開催国のチリ。5万人に迫る大観衆がスタジアムに詰め掛ける見込みで、異様な雰囲気になることが予想される。喜多は「緊張はするんですけど、楽しめるはず」と笑顔を見せたように、動じていない。

 大会前、ソシエダのトップチームで活躍する久保建英からメッセージをもらった。「U-20ワールドカップはいろんな人から見られている。なかなか経験できないよ」。

 大先輩からの言葉を胸に、喜多はチリ戦でも逞しく戦う姿を見せてくれるだろう。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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