ブラジル代表がW杯へ秘策!「PK戦専用のGKを用意する」その有力候補に名将はコリンチャンスの26歳を検討【現地発】

2025年09月29日 沢田啓明

昨年4本、今年もすでに4本をストップ

25年2月にセレソンに初招集されたウーゴ・ソウザ。PK戦専用の守護神としてアンチェロッティ監督も一目を置く。(C)Getty Images

 カルロ・アンチェロッティ監督が9月中旬、「セレソンは2022年ワールドカップ(W杯)準々決の勝クロアチア戦で延長、PK戦の末に敗れた。我々は来年のW杯に向けて、PK戦専用のゴールキーパーを用意することを検討している」と語った。

 その候補として現代表では控えのウーゴ・ソウザ(コリンチャンス/26歳)を挙げ、「彼は長身でPKに非常に強い。今後の強化試合で起用し、チームにも馴染ませるつもりだ」と説明している。

 ソウザは身長198㎝。昨年は国内の試合で4本のPKを止め、今年もすでに4本をストップしている。

 現在のセレソンの正GKは、アリソン(リバプール)。22年W杯でもセレソンの正GKを務めたが、準々決勝のPK戦では4本中1本も止められなかった。一方、ブラジル側は2人が失敗し、2-4で敗れた。アリソンは非常に優秀なGKだが、PK戦に滅法強いというわけではない。

 22年W杯では、決勝トーナメント以降の16試合中、5試合がPK戦による決着。優勝したアルゼンチンと3位のクロアチアはそれぞれ2試合ずつ、4位のモロッコは1試合をPK戦で勝ち上がった。

 クロアチアはPK戦のスペシャリストで、18年大会でも2試合をPK戦で制して準優勝している。今や、W杯で上位に食い込むためにはPK戦を制することが極めて重要な要素となっている。

 22年W杯を含む過去10大会では、1大会あたり平均3.4試合が延長、PK戦までもつれ込んでいる。とくに直近の3大会は4試合、4試合、5試合と増加傾向にある。世界トップレベルの国々の間で戦力が非常に拮抗しているからだろう。
 
 過去のW杯では、PK戦直前に控えGKを投入し、成功した例がある。

 14年大会の準々決勝で、オランダがコスタリカと対戦。0-0で迎えた延長後半にGKをヤスパー・シレッセンからティム・クルルへ交代した。そして、PK戦でクルルが2人目と5人目のキックをストップ。準決勝へ勝ち上がる立役者となった(ただし、準決勝のアルゼンチン戦では延長後半の時点で選手交代枠を使い切っていて、GKはシレッセンのままPK戦で敗れた)。

 また、22年大会予選の大陸間プレーオフで、オーストラリアがペルーと対戦。0-0で迎えた延長後半にGKをマシュー・ライアンからアンドリュー・レッドメインへ代えた。レッドメインは身長がライアンより10㎝高く、ゴールライン上を動き回り、手足を振り上げる独特な動きでキッカーを盛んに幻惑する。3人目と6人目のキックを止めて、チームをW杯出場へ導いた。

 セレソンの場合、ソウザは身長がアリソンより5cm高く、なおかつPKストップのスペシャリスト。もしアンチェロッティが来年のW杯にソウザを招集し、決勝トーナメントの試合が延長、PK戦にもつれ込んだ状況でソウザを起用すれば、大きな効果が期待できる。22年大会の苦い思いを払拭できるかもしれない。


文●沢田啓明
 
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。 

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