熊本戦は悔しいドローも千葉CB鳥海晃司が見せたチームを救う“スーパークリア”。鈴木大輔も称えたベンチスタートだった男の強い覚悟

2025年09月28日 本田健介(サッカーダイジェスト)

長崎、水戸とのビッグマッチを控えるなかで

熊本戦は途中出場となったCB鳥海。チームのピンチを救った。写真:福冨倖希

[J2第31節]千葉 2-2 熊本/9月27日/フクダ電子アリーナ

 悲願のJ1復帰へ自動昇格圏入りを目指す3位の千葉は、ホームで熊本と対戦。このゲームの後、32節にはホームで2位の長崎と、その翌節にはアウェーで首位の水戸と対戦する"ダブルビッグマッチ"を控える千葉にとって17位の熊本との一戦は勝点3をしっかり積んでおきたい試合であった。

 しかし、12分にオウンゴールで先制を許すと、前半の内にFW呉屋大翔のゴールで追いつくも、後半も先行され、70分のイサカ・ゼインのゴールで勝点1を掴む結果となった。

 小林慶行監督も悔しそうに振り返った。

「失点の仕方というのが、やはり相手は決定機をしっかり仕留めてきたという形だったと思います。自分たちのミスを許してくれなかった。逆に言えば、自分たちにも4回、5回は決定機と言えるものがあったんじゃないかと思います。その決定機をひとつも沈められなく、逆に、(千葉のゴールとなった)呉屋(大翔)や、(イサカ・)ゼインのシュートというのは本当に個の力によるものだったと思います。

 これだけ多くの方が駆けつけてくれて、自分たちの目標を考えた時には勝たなければいけないゲームだったというのは間違いないとは思います。これ以上何をすればいいかというところでは、作った決定機を決められないならさらに多くの決定機を作る以外にないし、そういうトライをチームとしてやっていくと。

 それでも、今週で言えばチーム全体として、メンバーに入れなかった選手も含めてものすごく良いトレーニングをしてくれました。だからこれを続けていこうとさっき話しましたし、それ以外にないと思います。点が取れないのであればチャンスを作り続けるしかない。選手一人ひとりはそこに向き合ってくれているので、もっともっと研ぎ澄ましていく」

 攻守ともにさらなる質の向上が求められるなか、「勝点3を目指してやっていたので悔しいですが、そこ(勝点1)をどうポジティブに捉えるかだと思います」と語ったのはキャプテンマークを巻いたCB鈴木大輔だ。

 千葉のCBと言えばタレントが揃い、開幕当初は鈴木と今季J1のC大阪から古巣の千葉へ戻ってきた鳥海晃司のコンビが軸で、その後は、鳥海と河野貴志が組み、鈴木はベンチに控える時間が続いた。

 一方で、鳥海と河野のコンビが先発した29節のアウェー・山口戦では最終盤の相手のカウンターを止め切れずに決勝弾を許して1-2で敗戦。すると前節の愛媛戦は鈴木と河野のコンビでクリーンシートを果たし、河野がベンチにも入らなかった今節は、鈴木と大卒2年目の久保庭良太が組む形となった。だが、2失点していた74分に久保庭との交代で投入されたのが、前節同様にベンチスタートの鳥海だった。
 
 今季の千葉の良さと言えば、一致団結という言葉が当てはまるような、チーム全体で意識を共有し、誰が出ても同じベクトルを持って戦えていることだろう。

 以前に鈴木も「次に自分に出番が回ってきた時のために最大限の準備をするとか、自分が苦しい時にチームのためにどれだけできるか。そこを口にしてくれている選手たちがいる。そういう選手たちがいるからこそ自分たちはやれている。周りの選手たちのお陰で今の状況がある。大事なのはやっぱりチーム。僕は出ていない選手たちのサポートが何より大きいと感じています。それぞれの立場で悔しい想いを押し殺してチームのために動いてくれている。でも次出るために準備は怠らない。そこがあるから今の自分たちがある。そこは忘れちゃいけない」と力説していた。

 そんな鈴木は出場機会を得られない時間も「やることは変わらないので、自分が出られない時に良い準備をしてコンディションを整えるだけでした」と話し、こう続けた。

「チームとしてアクシデント等がありメンバーが変わったりするなかで残り試合を考えると、そういうことは起こり得る。総力戦になってくるので変わった選手がどれだけ結果を残せるか。チームとしてやりたいことを表現できるかが鍵になってくるので今日もそうした戦う姿勢は表現できたと思います」

 そのなかで山口戦では決勝弾を目の前で奪われ、その翌節は先発から外れた鳥海は悔しさを抱えていたはずである。しかし、先輩の鈴木のように準備をしてきたからこそ、熊本戦で見せたのはチームを救う"スーパークリア"であった。

 2-2の75分、右サイドからクロスを送られると、逆サイドのペナルティエリア内で相手選手にゴール前に折り返される。GK鈴木椋大も反応し切れずに失点を覚悟した瞬間、あとは押し込むだけだった相手選手の前で必死に足を伸ばして間一髪でクリアしたのが鳥海だった。

 鈴木はその鳥海に対して試合後にはこうコメントしてくれた。

「今年、覚悟を持って帰ってきてくれて、CBとしてシーズンを通して高いパフォーマンスをしていると思いますし、引っ張ってくれている。そこの信頼は揺るがないです。ただ、彼がいなくなったらチームが揺らいでしまうとか、そういうところは自分としても避けたいので代わりに出た選手が彼のような活躍ができるか非常に大事ですし、彼は今日途中から出てきてゲームをもう一回引き締めてくれたのは非常に心強かった。改めて強い覚悟をピッチで表現してくれる選手だと感じました」

 2-2で試合終了のホイッスルを聞いた瞬間、しゃがみこんだままなかなか立ち上がれなかったのが鳥海であり、チーム在籍8年目の高橋壱晟であった。勝点3が欲しいゲームであったが、長崎、水戸との連戦をしっかり制することができればJ1への道は開けるはずである。

 鳥海らの想いが結実する瞬間をぜひとも期待したい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)



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