マドリーは育成の重視する稀有なビッグクラブ。CFはまさに特産物だ【コラム】

2025年09月27日 小宮良之

OBがマドリディスモを伝達

クラブ・ワールドカップでブレイクしたゴンサロ・ガルシア。(C)Getty Images

 ビッグクラブは潤沢な資金を武器に、他クラブで結果を残した選手を高額でも獲得することが多くなる。スモールクラブにとっては目が飛び出るほどの移籍金や年俸で、もし失敗したら屋台骨が崩れるほどの衝撃が見込まれるが、それでも"安い買い物"なのだろう。なぜならビッグクラブは勝利を義務付けられ、タイトルを手にするには投資が必要だからだ。

「安物買いの銭失い」

 そんなことになれば、元も子もない。他のクラブで活躍している選手は、"優良株"で、値は張ってもリスクが低い"商品"のはずだ。

 結果、多くのビッグクラブ(新興であればあるほど)は育成にあまり熱心ではない。

 しかし世界最大のビッグクラブであるレアル・マドリーは、育成にも手をかけている。下部組織から1部で活躍する多くの選手を輩出しているのだ。

 今夏のクラブ・ワールドカップで一躍ブレイクしたストライカー、ゴンサロ・ガルシアは、カスティージャが生み出した典型的センターフォワードと言える。過去にも有力な選手を生み出し、CFはまさに"マドリーの特産物"だ。

 現役だけでも、ロドリゴ・モレーノ、アルバロ・モラタ、ホセル、ボルハ・マジョラルなど少なくない。トップチームにはロナウド、ルート・ファン・ニステルローイ、クリスティアーノ・ロナウド、カリム・ベンゼマ、キリアン・エムバペのようなスターが来るだけに、新天地を求めざるを得ないが、そこで得点を量産する姿が"マドリーの底力"を映し出すのだ。
 
 また、ディフェンス面も人材が多い。昨シーズン後半、"最速"を武器に頭角を現したラウール・アセンシオ、貴重な左サイドバックになりつつあるフラン・ガルシア、長身センターバックとしてポテンシャルの高さが期待されるハコボ・ラモン、そして再起が見込まれる世界最高の右サイドバック、ダニエル・カルバハルなど現チームの面々だけでも錚々たるメンバーだ。

 そして下部組織の監督は、マドリーのトップチームでプレーしてきた元選手がなる場合が多い。Bチームであるカスティージャの監督は、昨シーズンまで英雄ラウール・ゴンサレスが率いていた。新シーズンは同じくマドリーでプレーしたアルバロ・アルベロアが率いる。

 ちなみにトップチームを率いることになったシャビ・アロンソは現役時代、マドリーで数々の栄光に浴し、指導者のスタートではマドリーのU-14チームを率いた。マドリディスモ(マドリー主義)の伝達が、彼らの源泉だ。

〈常勝精神〉

 それを下部組織で伝え、浸透させ、還元することによって、トップチームを特別な存在にしているのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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