飽くなき闘争心、不撓不屈…ウルグアイ人選手に受け継がれる“ガーラ・チャルーア”の伝統【コラム】

2025年09月24日 小宮良之

相手を叩き潰す気概で戦い続ける

レアル・マドリーでも主力を担うウルグアイ代表のバルベルデ。(C)Getty Images

「GARRA CHARRUA」(ガーラ・チャルーア)
 
 それはスペイン語で「チャルーア族の爪」と言う意味だが、ウルグアイでは決して負けられない場に臨んだときの血が沸騰する闘争心を意味している。かつて侵略者に対し、滅びるまで最後まで戦い抜いたチャルーア族への敬意を表した言葉と言えるだろう。今やウルグアイ人サッカー選手の不屈さと同義語になっている。

 それこそ、人口約340万人前後の小国であるウルグアイが、サッカー大国の一つである理由と言えるだろう。

 1950年ブラジルW杯決勝のウルグアイが開催国ブラジルを下した戦いは、今も伝説として語り継がれる。強者を倒すため、一致団結して闘争できる。

「マラカナン(スタジアム)で大観衆を黙らせたのは、世界に3人しかいない。フランク・シナトラ、パパ(ローマ法王)、そしてこの俺だけだ」

 これは"マラカナンの悲劇"と言われる一戦で決勝点を叩き込んだウルグアイの伝説的アタッカー、アルシデス・ギジャの名言である。ギジャはとびっきり足の速いウィンガーで、41歳までプレーした。2015年夏に、心不全のため88歳で永眠している。

 これはもはや昔話だが、それ以降も、ウルグアイは有力な選手を数多く生み出してきた。それは戦いの原則を守ってきたからだろう。どんなに戦術やトレーニングが進化しても、彼らのアイデンティティのようなものは変わらない。なぜなら、その気概を失くしてしまったら、ウルグアイらしさも失われてしまうのだろう。
 
 レアル・マドリーに所属し、副キャプテンを務めるフェデリコ・バルベルデは、まさにガーラ・チャルーアを象徴するような選手と言えるだろう。どんなクラブでも、舞台でも、集中して戦える。とにかく、戦闘から逃げない。常に形勢をひっくり返し、相手を叩き潰す気概で戦い続ける。決して派手なテクニックはないが、大砲を思わせるシュート力は圧巻だ。

 そしてロナウド・アラウホ(FCバルセロナ)、ホセ・マリア・ヒメネス(アトレティコ・マドリー)など、バックラインで体を張って守るディフェンダーに人材を輩出しているのも興味深い。

 もっとも、それは伝統でパオロ・モンテーロ、ディエゴ・ゴディン、マルティン・カセレスなど門番のようなセンターバックたちがそれぞれビッグクラブでプレーし、タイトル獲得に貢献した。

「手が使えなくなっても、ナイフを口にくわえて戦える」
 
彼らの闘争心は、そんなフレーズで表現される。
  
 現代はグローバリズムの躍進で、画一化されつつところもあるだろう。しかし、ガーラ・チャルーアの伝統は今も残っている。

文●小宮良之

【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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