首位“鬼木アントラーズ”の強さが垣間見えた瞬間。8戦負けなし&3連勝につながったC大阪戦の逆転勝利の背景

2025年09月24日 本田健介(サッカーダイジェスト)

中2日の厳しいゲームを総力戦で乗り切る

3連勝を飾った鹿島。首位の座をキープした。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第31節]鹿島 3-1 C大阪/9月23日/メルカリスタジアム

 首位の鹿島がホームにC大阪を迎えた一戦、満員のアウェー・埼玉スタジアムで勝利した前節の浦和戦から4人を入れ替えて臨んだ鹿島は、11人総入れ替えという大胆な策に出たC大阪に28分にPKで先制されるなど苦戦を強いられた。

 それでもPKを献上した知念慶が3分後に豪快なヘッドで同点弾を奪うと、53分にはレオ・セアラ、68分には松村優太のゴールで突き放し、首位キープとなる3連勝(8戦負けなし)を飾ってみせた。

 国立競技場で開催した川崎戦を除けば、リーグ戦での本拠地・メルスタでの先制を奪われた後の逆転勝利は今季初だという。何よりC大阪と同様の中2日での試合において、チーム全員が最後まで力を抜かずに走り切った姿が印象的であった。

 試合終了のホイッスルとともに、フル出場の小池龍太、L・セアラらだけでなく、途中出場の鈴木優磨、チャヴリッチ、松村優太らもその場に倒れこむ。時間が限られていれば、その分、チームのために足を止めずに駆け回る。そんな姿からはチームの強い一体感と、目指している方向性が揃っていることが感じられた。鬼木達監督が口にした「総力戦」という言葉がまさにふさわしい内容だったと言えるだろう。

 指揮官は「選手が気持ちのこもったゲームをしてくれた。後から出てくる選手もつながりながら、かなりきつかったと思いますが、最後の最後までよく走りきってくれたと思います」と選手たちの奮闘に胸も張ってみせる。
 
 ハーフタイムで交代となった柴崎岳、ターレス・ブレーネル、そして最後まで出番が回ってこなかった選手らは悔しいも思いも残っただろう。それでも優勝のために、目の前の試合に勝つために、誰もが一切手を抜かずにチームのために行動できるのが今の鹿島の強さの背景と言えそうだ。

「勝ったからOKとなっていないのが大きい」と口にしたのは交代出場直後に3点目を奪った松村である。

 先発でなくとも自身に与えられた役割をまっとうし、誰もが慢心することなく試合が終われば課題を見つめ合う。"勝ちながら修正"と言える、まさに理想的な循環に入っているのだろう。

 確かにゲーム内容はまだまだ改善が必要である。後方からのビルドアップは精度、チームとしての形をより磨くとともに、相手を見て柔軟に振舞えるようになることが求められ、攻撃のさらなるレパートリーアップも大切だろう。

 ただし、先制をされても落ち着いて相手を押し込みながらシンプルなクロスでネットを揺らす力強さは往年の鹿島らしさを感じさせ、L・セアラの逆転弾は相手のミス絡みであったがシンプルなロングボールを活用した形で、3点目は知念のスルーパスを受けた左サイドハーフのチャヴリッチのグラウンダーのクロスに2トップのL・セアラ、鈴木、右サイドハーフの松村がしっかり中にポジションを取ったからこそ奪えた得点であった。3点とも基本に忠実で、やることが徹底されている裏付けにも感じられた。

 試合終盤は重心をかなり下げ、相手のクロスをしっかり撥ね返す手堅い守備も披露している。

 本来は鬼木監督がかつて率いた川崎で見せたような華麗なパスワークや、攻め切るスタイルも見せたいのだろうが、今は自分たちにできることをしっかり整理し、それを体現し続けている。監督、選手らに迷いがないからこそ、勝点を積めるのだろう。

 こうした勝利のために戦い続けられる集団に就任1年目で導いている鬼木監督の手腕は改めて特筆に値する。

「当初から雰囲気の良さを感じていましたが、すごく良いチームになってきた」

 スタジアムを後にする前に語ってくれた鬼木監督の言葉も印象的である。

 川崎で3度のJ1制覇の経験のある知念は「終盤戦に向けて調子を上げていくことが大事」と話す。まさにその形になっているのも追い風だろう。

 リーグは残り7戦。今節の結果で勝点を61に伸ばした鹿島は、2位の神戸との勝点差を4に広げた。果たしてこのまま走り切るのか。大いに楽しみだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
 
【画像】小野伸二や中村憲剛らレジェンドたちが選定した「J歴代ベスト11」を一挙公開!

【画像】サポーターが創り出す圧巻の光景で選手を後押し!Jリーグコレオグラフィー特集!

次ページ【動画】鹿島×C大阪ハイライト

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事