「欧州に来た一番の理由」“日本の10番”がデビュー戦で語ったCLへの思い。大勝劇を呼び込んだワンプレーを指揮官が称賛「我々を目覚めさせた」【現地発コラム】

2025年09月21日 中野吉之伴

「勢いをもたらせたプレーだった」

ついにCLデビューを飾った堂安。(C)Getty Images

 日本代表MF堂安律がプレーするフランクフルトは、トルコの強豪ガラタサライをホームに迎えたチャンピオンズリーグ(CL)のリーグフェーズ初戦で、5-1と見事な大勝を飾った。

 スターティングメンバーのCL出場歴でみたら、マンチェスター・シティで数々のタイトルを獲得したイルカイ・ギュンドアンや、バイエルンで長年活躍したレロイ・ザネを擁するガラタサライのほうに分があったかもしれない。

 CL初出場選手が多いフランクフルトはミスから先制ゴールを許すと、その後しばらく慌てふためくシーンが散見。不用意に守備ラインをあげてカウンターを受けたり、ゴール前でクリアできずに連続でピンチを迎えたりしていた。

 試合後の記者会見でフランクフルトのディノ・トップメラー監督が「いい形で試合に入ったと思うが、相手に先制点を許してしまった。やはりどこかナーバスさがあったと思われる」と立ち上がりについて振り返っていたが、ここで2失点目を喫していたら、試合展開は全く別のものになっていたことだろう。

 そんな嫌な雰囲気を一掃するゴールを生み出したのが堂安だった。ジャン・ウズンからのミスパスにも足を止めずにプレスをかけて奪い返し、飛び出してくるGKより一瞬早くボールに触り、そのボールがクリアに走ってきていたDFの膝に当たってゴールへ吸い込まれた。記録上はオウンゴールだったが、まさに気持ちでねじ込んだ得点だった。
 
「あそこで生まれた同点ゴールが我々を目覚めさせる瞬間となった。ガラタサライがリスクをもってビルドアップしてくることは知っていたので、そこでボール奪取チャレンジできると思っていた。リツはそれをとてもうまくやってくれた」と指揮官がこのゴールの価値について強調していたことが、多くを物語っている。

 日本代表の10番は試合後ミックスゾーンで行われたフランクフルトTV向けのインタビューで、ゴールシーンを次のように振り返っている。

「0-1で負けていて、スタジアムの雰囲気もあまりよくなかった中で、ああやって1-1にできたことは、チームにとっても勢いをもたらせたプレーだったと思うので、すごく大事なゴールだったと思います」

 移籍後すぐにスタメンの座を確保し、自身初のCLの舞台で躍動した堂安。ゴールが決まるたびに見せていた大きな力強いガッツポーズが、この試合にかける思いの強さを表していた。

「自分にとっても初めてのチャンピオンズリーグの舞台ということで。ヨーロッパに来た一番の理由はこの舞台に立つことでした。その1試合目でこうして大勝することができて、チームの勝利に貢献できてうれしく思います」

 幸先のいいスタートをきった堂安とフランクフルト。ブンデスリーガも、CLもまだ始まったばかり。でも今後に期待を抱かせるだけのものが、確かにある。

取材・文●中野吉之伴

【動画】堂安のCL初ゴールかと思われたが…オウンゴールとなった同点弾

【記事】彼がいないとここまで違うのか。完敗の日本代表は「生命線」の不在が大きく影響した【担当記者コラム】
 

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